最近の時代劇の中では本格派の歴史ドラマとして抜群に面白かった『王になった男』は、光海君(クァンヘグン)を主人公にしていたが、同時に、イ・セヨンが演じる王妃も詳しく登場していた。
そして、『王になった男』では光海君が命を絶たれて影武者だった道化師のハソンが国王になって国の政治を正しい方向に導き、夫婦は幸せなクライマックスを迎えていった。
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こうして感動的なドラマになったのだが、ドラマと違って実際の歴史では、王妃は本当に苦しい境遇を強いられてしまった。
そういう意味では、ドラマと歴史は最後の描き方がまったく違うのだが、歴史が叶えることができなかったことを『王になった男』が実現させてくれたと考えれば、韓国時代劇の役割に拍手を送りたい気持ちも強くなる。
なにしろ、王妃は史実では残念ながら「廃妃・柳氏(ペビ・ユシ)」としか言われないのだ。夫の光海君が1623年にクーデターで王位を追われて島流しになってしまったからだ。
それによって王妃も廃妃になった。その後の運命はどうなってしまったのか。そのあたりを見てみよう。
光海君が廃位になった後、妻の柳氏は夫と息子夫婦と一緒に江華島(カンファド)という島に流された。その島に向かう船の中のことだ。
柳氏は光海君に対して「一緒に死にましょう」と呼びかけた。これ以上は絶望したくなかったからだ。
しかし、光海君は柳氏の言うことに従わなかった。彼は生き抜いて再起をはかりたいという気持ちが強かった。
ただ、家族が悲惨であった現実は変わらなかった。江華島に住んだあと、息子夫婦は逃亡しようとして命を絶たれてしまったのだ。
これが柳氏の決断を促すことになった。息子をなくして悲観した彼女は、夫を残して自害してしまった。
それでも光海君は生の望みをあきらめず、妻が亡くなったあとも18年間も生き抜いた。
そんな悲しい夫婦を『王になった男』は幸せな夫婦に変えてくれたのかもしれない。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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