それは、2004年のことだった。中国の歴史機関が公式的に「高句麗の歴史は中国の一つの地方史である」という見解を述べた。要するに、高句麗(コグリョ)は中国の一時代に属していた国家だったというのだ。
この見解に韓国は反発した。高句麗といえば、朝鮮半島に興った有力な国家だった。その歴史を中国が取ってしまうのか。
韓国の人たちの怒りを敏感に感じ取ったのがテレビ局だった。
「高句麗が朝鮮半島の国家であったことをドラマを通して如実に示さなければならない」
そんな風潮が沸き起こり、韓国の有力なテレビ局で高句麗を舞台にした時代劇を制作する機運が高まった。
そんな中で企画されたのが2006年に放送されたMBCの『朱蒙(チュモン)』であった。高句麗の伝説的な始祖を主人公にしてスケールが大きい時代劇が作られたのだ。
ソン・イルグクが朱蒙に扮した時代劇は、最高視聴率がなんと52・7%を記録した。まさに、社会的にブームを巻き起こすほどの人気だった。
一方、KBSは国民俳優のチェ・スジョンを主役にして『大祚栄(テジョヨン)』を放送した。大祚栄といえば、高句麗の遺民たちが建国した渤海(パレ)で初代王となった英雄である。
そんな大人物をチェ・スジョンが演じて、高句麗の魂を受け継いだ大王がドラマのうえで甦った。
そして、今度は三大テレビ局の一つだったSBSの番になった。このテレビ局は、高句麗末期の怪物的な最高実力者を主人公にして『淵蓋蘇文(ヨンゲソムン)』を放送した。
このように、2006年から翌年にかけて高句麗を舞台にした時代劇が活況を呈した。
これは決して偶然ではない。「偉大な高句麗の歴史は朝鮮半島の固有のもの」を示す必要があることを三大テレビ局が痛感した結果である。
しかも、信じられないような大ヒットを記録した。こうなると、時代劇制作の流れは古代の三国時代に向かっていく。かくして、韓国の放送界では三国時代を扱ったドラマがとても増えていった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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