韓国時代劇は16世紀から18世紀までの朝鮮王朝を描いた作品がとても多い。そんな傾向が最近になって変わってきた。19世紀を描いたドラマが徐々に多くなってきたのだ。
この時代は歴史が複雑な様相を帯びていて、描き方によっては視聴者がわかりづらい展開になってしまうのだが、そんな前例を覆すような傑作が誕生した。
それが『風と雲と雨』である。韓国では2020年にTV 朝鮮で放送するや同局内で視聴率 1 位を獲得。日本では2021年10月6日からDVDリリースされることはもちろん、U-NEXTでも独占先行配信がスタートする注目作だ。
このドラマは本当に見どころが多い。
最初に強調したいのは、19世紀の朝鮮王朝の歴史を生かして壮大な愛と運命の物語をスリリングに展開していることだ。
何よりも、次期国王の争いと主人公2人のラブロマンスが劇的にリンクして、ワクワクするほどのストーリー性がある。脚本を担当するパン・ジヨンは『夜警日誌』でも知られているが、その力量は素晴らしい。
そして、注目したいのは、パク・シフが9年ぶりに時代劇の主役として帰ってきたことだ。彼は『王女の男』で鮮烈な印象を残したが、今度は王朝最高の易術師チェ・チョンジュンに扮して次期国王選びに影響力を発揮するキングメーカーを演じている。
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颯爽と韓服を着たときのパク・シフはとても絵になる。まさに「よくぞ時代劇に戻ってきてくれました」と感心するほどだ。
ヒロインのイ・ボンリョンに扮するのは、実力派女優のコ・ソンヒだ。
ボンリョンは人の運命がわかるという特殊能力を持った王女なのだが、運命に翻弄されて愛するチョンジュンと引き裂かれてばかりいる。そんな波乱の女性をコ・ソンヒが愁いを含んだ表情で演じきっていた。
その他でも、キャスト陣がとても豪華だ。
うれしいのが、次期国王の鍵を握っている王族の興宣君(フンソングン)を名優チョン・グァンリョルが演じていることだ。
彼は歴史上の有名人を演じるときにひときわ輝く俳優なのだが、今度の興宣君の役もドンピシャリの当たり役だ。物語の流れを変えるほど鮮烈な演技を今回もチョン・グァンリョルが存分に見せてくれている。
さらに、悪役が強烈だ。特に、キム・スンスとソンヒョクは悪事のかぎりを尽くす汚れ役を憎たらしく演じていて、ドラマにヒリヒリするような緊迫感をもたらしていた。
物語の成り立ちを見てみよう。
両班(ヤンバン)の御曹司チョンジュン(パク・シフ)は天才的な頭脳を持っていたが、父親が悪徳高官のビョンウン(キム・スンス)の陰謀によって罪をかぶさせられ、しかも野望に燃えて悪に走ったインギュ(ソンヒョク)によって父親が殺されてしまう。
さらには、将来を誓い合ったボンリョン(コ・ソンヒ)は、王女でありながらビョンウンによって軟禁され、チョンジュンと離れ離れになった。
没落したチョンジュンは必死に易学を学び、やがて王朝最高の易術師になって都で大評判になり、ついには次期国王の人選に決定的な役割を果たしていく。その中で、彼は再会したボンリョンとの愛を必死に取り戻そうとするのだが……。
このような展開が続いていく。韓国ドラマは「次回がすぐ見たくなる」ことが特徴だが、『風と雲と雨』は本当に次が見たくて仕方がなくなるほどの傑作である。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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