NHK総合テレビで日曜日に放送されている『ヘチ 王座への道』が後半に入ってさらに面白い。特に、物語が佳境に入るたびに印象的なエピソードが組み込まれていて興味深い。
このように『ヘチ 王座への道』を見ていると、やはりドラマは脚本の力が大きいと改めて感じる。優れた脚本がベースにあって、魅力的な俳優陣と創造力のある演出が加わって傑作が作られていくのだ。
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それにして、『ヘチ 王座への道』の脚本家の名前にキム・イヨンを見つけると、「やっぱり、さすがだなあ」と思わざるをえない。
キム・イヨンといえば、『イ・サン』『トンイ』『馬医』などの脚本家としてよく知られる。どれも傑作ぞろいで、彼女の巧みなストーリー展開はいつも見事である。そのセンスは、『ヘチ 王座への道』にも十分に生かされている。
もともと、時代劇においてキム・イヨンが描く世界というのは、歴史的な事実を踏まえたうえで、細かな人間関係には大胆な解釈を加えている。
つまり、歴史的なディテールを積み重ねていくと、登場する人物が「このように動いていくはず」という客観的な事実に裏付けされて行動していくのだ。
イ・ソジンが演じた『イ・サン』の正祖(チョンジョ)にしても、ハン・ヒョジュが演じたトンイにしても、まるで水が高いところから低いところに流れるように自然体で動いていた。それゆえ、キム・イヨンが作るストーリーには、ぎくしゃくした感じがないのだ。
そういう意味でも、人間関係が複雑になっても、ドラマの描き方はシンプルである。それは、人間の「情」というものを脚本家が信じているからだろう。
『ヘチ 王座への道』も同様だ。チョン・イルが演じるヨニングンは、次から次へと困難にぶちあたるが、彼は人間としての「情」を失わず、耐えながら正しい道を歩んでいる。それゆえ、周囲から信頼されるし、自分も人生を堂々と生きていけるのだ。
『イ・サン』『トンイ』で感じていた麗しき情の世界を『ヘチ 王座への道』でもたっぷりと感じることができる。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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