ここで紹介した4人の世子たちは、それぞれに異なる苦悩と運命を背負いながらも、鋭い知性と深い人間性をもって視聴者の心に刻まれた。歴史に実在した世子も、創作の中に生きる世子も、その光と影は今なお多くの人の記憶に鮮やかに残っている。
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●4位/『100日の郎君様』のイ・ユル(演者ド・ギョンス)
抜群に優秀だった世子のイ・ユルは、陰謀うごめく王宮の闇の中で、悪徳高官の魔の手にかかり命を狙われる。しかし、奇跡的に生き延びる。その代償として記憶を失い、名もなき農民として再び生を受けた。
汗にまみれる生活を知らない彼は、慣れない農村での暮らしに四苦八苦し、「おとぼけ」とも言える振る舞いで、視聴者の笑いと共感を誘った。やがて記憶を取り戻したイ・ユルは、王宮へと帰還し、過去の因縁を背負いながら悪を討つために立ち上がる。そんなイ・ユルに扮したド・ギョンスは、運命に抗う姿を痛快に演じていた。
●3位/『赤い袖先』のイ・サン(演者イ・ジュノ)
後に名君の22代王・正祖(チョンジョ)になるイ・サンは、多くの試練に苦しめられながら、理想を貫こうとする気高い魂を宿していた。イ・セヨンが演じる宮女ソン・ドギムとの恋は、華やかな宮廷の陰に咲く一輪の花のように美しかった。
また、イ・ジュノが着た韓服は風のように軽やかで、まなざしには誠実さが込められていた。しかも、内面からにじみ出る知性が表現されていて、彼は2022年の百想芸術大賞においてテレビ部門の最優秀演技賞に輝いた。
●2位/『雲が描いた月明り』のイ・ヨン(演者パク・ボゴム)
ツンデレ気質のイ・ヨンは、気高き孤独と向き合いながら、政敵たちとの頭脳戦に身を投じていく。甘い微笑みの奥には、世子としての覚悟が秘められていた。また、イ・ヨンに扮したパク・ボゴムの韓服姿は、風雅の極みであり、見る人を感嘆させる優雅さを持っていた。
イ・ヨンのモデルである孝明(ヒョミョン)世子は、19世紀前半の朝鮮王朝に実在した人物であり、「実際にも非常に頭脳明晰で容姿端麗であった」と語り継がれている。それだけに、イ・ヨンをパク・ボゴムが演じたことは、まさにピッタリだった。
●1位/『青春ウォルダム~運命を乗り越えて~』のイ・ファン(演者パク・ヒョンシク)
文書を一度読むだけですべて記憶するという奇跡の頭脳を持つイ・ファン。彼は、「呪いの書」という不気味な存在に人生を脅かされていた。兄の死後に世子となったのだが、「兄を殺したのはお前だ」と書かれてしまい、暗殺の予兆までもが記されていた。混乱の中、彼の師匠の一家が毒殺される事件が勃発する。
容疑をかけられたのは、イ・ファンの親友との結婚を控えていたミン・ジェイ(演者チョン・ソニ)だった。無実を訴えて逃げる彼女が頼ったのがイ・ファン。疑いと信頼の狭間で揺れる中、イ・ファンはやがて彼女の真実を信じ、内官に変装させてかくまい、共に真実を追い求める。隠された陰謀を明かそうとするイ・ファンの姿は、まさに「運命を越える知性と勇気の結晶」であった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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