2010年に制作されたハン・ヒョジュ主演の『トンイ』。15年が経っていても人気が根強い。そして、このドラマでは、実在した淑嬪・崔氏(スクピン・チェシ)が主人公トンイのモデルになっている。
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その淑嬪・崔氏は19代王・粛宗(スクチョン)の側室であったが、歴史的な大事件の当事者になっている。彼女が、毒殺の標的になったという告発がもたらされたのは1694年3月29日であった。それは、張禧嬪(チャン・ヒビン)が王妃になって5年目だった。
そうした告発をしたのは、金寅(キム・イン)という下級官僚で、彼は「淑嬪・崔氏に対する毒殺未遂事件がありました」と訴えた。
さらに、金寅は驚くべき名前を口にした。なんと、張希載(チャン・ヒジェ)が毒殺未遂事件の首謀者だという。
この張希載は、張禧嬪の実兄だ。妹の権力に頼っていた男であり、狡猾な性格だった。そんな怪しい男が、国王の寵愛する側室を殺そうとしたというので、王宮は大混乱に陥った。
粛宗は、張希載の厳重な取り調べを臣下に命じた。その過程で、「張希載の黒幕は王妃に違いない」という噂が広まった。それは、仕方がない。張禧嬪が兄をそそのかしたことは十分に考えられることだった。
結局、張希載は済州島(チェジュド)への流罪となった。彼が本当に淑嬪・崔氏の毒殺を狙ったという確かな証拠は出てこなかったが、状況から見て、張希載を生贄(いけにえ)にしないと、ことが収まらなかった。
ドラマ『トンイ』では、俳優のキム・ユソクが張希載を演じていたが、いかにも悪事を働きそうな人物として描かれていた。史実では、張禧嬪が王妃から降格して没落したあとには、張希載も処刑されている。このように、悪名だけが残る人物だったのである。
張禧嬪と実兄の張希載……一時は王宮の中で権力をほしいままにした2人であったが、最後は共に死罪になっている。『トンイ』で典型的な悪役になっているのも、歴史が証明したとおりであった。
文=大地 康
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