テレビ東京の韓流プレミアで4月16日に放送された『太宗 イ・バンウォン~龍の国~』の第8話では、高麗王朝末期の重要事件が描かれていた。それは、チュ・サンウクの扮する李芳遠(イ・バンウォン)の手下が鄭夢周(チョン・モンジュ/チェ・ジョンファンが演じている)を殺害する場面だった。
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その暗殺に激怒した李成桂(イ・ソンゲ/キム・ヨンチョルが演じている)が五男の李芳遠を屋敷から追い出してしまった。李芳遠は「父上のためにやったのです」と弁明したのだが、李成桂は聞く耳を持たなかった。
本当に歴史を激変させる大事件だった。『太宗 イ・バンウォン~龍の国~』で描かれた鄭夢周の殺害場面は、果たして史実でどのような状況だったのだろうか。
1392年4月4日、落馬で重体に陥っていた李成桂がかろうじて都の開京(ケギョン)に戻った時、見舞いという名目で鄭夢周が訪ねてきた。ここで2人はお互いに「進むべき道」が完全に分かれてしまったことを実感したことだろう。その帰途、鄭夢周は店に寄って酒を飲んでから馬に乗った。
善竹橋(ソンチュクキョ)という橋を渡るときに、声をかけてくる者たちがいた。
「どちらに行っていらしたのですか?」
その者たちは李芳遠が送って来た一団で、鄭夢周をめがけて鉄槌を振り落とした。無残にも鄭夢周は大量の血を流して絶命した。享年は55歳であった。高麗王朝を1人で守り抜いてきた忠臣は、こうして李芳遠が送った刺客によって殺されてしまった。このとき、鄭夢周が流した血は善竹橋の石にしみこんで、その後に雨が降れば血痕が浮き出てくると言い伝えられてきた。
鄭夢周の死は、そのまま高麗王朝の滅亡につながった。もはや、命がけで王朝を守れる達人はいなくなってしまい、李成桂が新しい王朝を建国する契機が誕生した。この時点で李芳遠は、数多い兄弟の中でも最大の実力者になった。
もちろん、父の李成桂も五男の実力を認めていたのだが、それでも親子の確執が生じてしまった。そのことは、『太宗 イ・バンウォン~龍の国~』でも克明に描かれていくことだろう。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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