韓国時代劇に登場する悪女といえば、強烈な印象だったのが『宮廷女官 チャングムの誓い』のチェ尚宮だ。アクの強い女優のキョン・ミリが演じていたが、徹底的にチャングム(イ・ヨンエ)をいじめる役には恐ろしいほどの凄みがあった。
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『宮廷女官 チャングムの誓い』は20年前のドラマだが、最近の時代劇の中でも強烈な悪女が次々に出てくる。非常に印象深い悪役をピックアップしてみよう。
イ・ジュノとイ・セヨンが究極的な宮廷ロマンスを演じた傑作『赤い袖先』で、悪役を一手に引き受けていたのが和緩(ファワン)翁主(オンジュ)だ。演じたのはソ・ヒョリムで、とても憎々しい態度を随所に見せていた。その表情から希代の悪女のイメージが強烈に漂っていた。
この和緩翁主は、イ・ジュノが扮したイ・サンが即位してしまうと、自分の立場が悪くなる。それゆえ、きたない手を使ってイ・サンの即位を阻止していた。やることも極端にえげつなかった。そんな和緩翁主は英祖(ヨンジョ)の娘だ。同じ両親から生まれた兄が思悼世子(サドセジャ)で、2人は仲が悪かった。
思悼世子は英祖によって米びつに閉じ込められて餓死してしまうが、そのときに兄の悪口を英祖にさんざん言って親子を断絶させたのが和緩翁主だ。その罪は大きい。
イ・サンが22代王として即位したとき、彼は父の思悼世子を陥れた罪で和緩翁主を処罰し、身分を剥奪した。こうして史実でも悪女は没落していったのだ。
次に印象的な悪女を見ていこう。
チョン・イルとクォン・ユリが主演した『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』でソン・ソンミが演じていた女官の金介屎(キム・ゲシ)。彼女は手段を選ばない悪女で、光海君(クァンヘグン)の裏で暗躍していた。そんな狡猾な悪事が『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』でもよく描かれていた。
たとえば、クォン・ユリが演じるファイン翁主(オンジュ)が生きているのに、「死んでください」と非情に突き放していた。このように、ドラマの中で金介屎は本当に利己的な悪女だった。
2016年制作の時代劇まで振り返ると、『オクニョ 運命の女(ひと)』でキム・ミスクが演じた文定王后も強烈だった。
彼女は11代王・中宗(チュンジョン)の三番目の正室で、悪役としての演技に定評があるキム・ミスクが演じていた。典型的なワルであった文定(ムンジョン)王后は、自分が産んだ我が子を国王にするために、中宗の先妻が産んだ12代王・仁宗(インジョン)を毒殺している。
その後に息子が明宗(ミョンジョン)として即位すると、文定王后は賄賂を横行させた政治を堕落させた。まさに極悪の王妃であり、彼女がひんぱんに登場した『オクニョ 運命の女(ひと)』は「悪女時代劇」の性格がとても強かった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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