ドラマ『イ・サン』の第68話から第69話にかけて話題の中心になっていたのが科挙であった。ドラマの中では科挙がいかに重要であったかが細かく描かれていた。
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そもそも科挙とは、国家が行なう権威がある官吏登用の試験である。中国にならって朝鮮半島でも高麗時代から採用されていたが、儒教国家である朝鮮王朝では特に重要視されていた。なにしろ、科挙に合格しないと政治に関わる高官になれないというのが王朝の大原則であった。
何よりも、由緒正しき家柄の子弟であろうとも、科挙に合格しない限り高い官職に就くことはできなかった。したがって、名家の継承者たちは、エリートとしての地位を保つため、日夜、科挙の合格を目指して学問に精進した。
科挙には多様な学科が設けられていたが、その中心は「文科」であった。これに合格すれば、最も名誉高き地位を得ることができた。また、「武科」や「雑科」といった学科も存在した。
科挙の試験は段階的に進行する。「初試」と称する1次試験は各地で施行され、これに合格した者は都で2次試験である「覆試」を受験する機会を得る。さらに、その上位者のみが、王の前で「殿試」という最終試験に挑む権利を得る。この試験を突破すると、高級官僚としての華麗なるキャリアの第一歩を踏み出すことができた。
しかしながら、朝鮮王朝の後期において、科挙に関する不正行為が甚だしく問題視されるようになった。イ・サンが統治する時代も、巨大派閥の老論派が自分たちに有利な人材を選抜するために不正に手を染めており、不祥事が繁発する様相を呈していた。
具体的な不正行為としては、替え玉による受験、参考資料の持ち込み、試験問題の漏洩、答案用紙の事前提出、そして、カンニングといった手口が横行していた。
その結果、不正行為の摘発が相次ぎ、科挙自体の存在が危ぶまれる事態に陥った。これではいけないということで、試験の方法が改善された。
どの時代も、試験の不正はあるものだ。朝鮮王朝で一番重要な試験であった科挙でもこの問題では頭が痛かったのだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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