時代劇『七日の王妃』では、ヨン・ウジンが晋城大君(チンソンデグン)を演じている。彼は誠実な男性だ。それは、ドラマでも史実でも同じだった。晋城大君は異母兄の燕山君(ヨンサングン)と違って、性格的にはなんら問題がなく、まっすぐな人生をゆっくり歩こうとしていた。
【写真】【史実】『七日の王妃』でヨン・ウジンが演じる晋城大君はどんな人物なのか
それ自体は、いいことだ。人間として信頼が置ける存在だ。
もし、晋城大君が国王の弟としてなんの苦労もなく妻の慎氏(シンシ)と平穏な暮らしを続けていたら、どれだけ幸せであったことか。
そのことを晋城大君も心から願っていたはずなのだが……。
しかし、運命は望みどおりにならない。
結局、燕山君は悪行がたたってクーデターを起こされて、廃位となってしまった。その末に、クーデターを成功させた高官たちは、晋城大君を次代の国王に推挙した。
その気がなかった晋城大君は強く固辞したのだが、それも叶わず、晋城大君は最終的に中宗として即位した。
彼の人生がガラリと変わったのはそれからだ。妻の慎氏は端敬(タンギョン)王后になったが、高官たちの圧力によってわずか7日で廃妃(ペビ)となってしまった。
中宗は国王という最高権力者になったのに、愛する妻の廃妃を防ぐことができなかった。
「なぜ妻を守れなかったのか」
誰もが素朴にそう思う。もちろん、中宗も抵抗した。しかし、最後は我を通すことができずに、廃妃を主張する高官たちに押し切られた。
これこそが、中宗の優柔不断なところだ。
しかも、彼は国王の器ではなかった。それは、決断力が弱かったからだ。これでは、統治者として政治を仕切っていけない。ゆえに、中宗は政治的な業績を残すことができなかった。これでは、「凡庸な国王」と言われても仕方がなかった。
そんな中宗が一番幸せだった時期はいつなのか。
それは、間違いなく慎氏(シンシ)と仲睦まじく暮らしたときだった。
そんなことを思いながら『七日の王妃』の前半を見れば、若き晋城大君の新婚生活を愛しく思えるかもしれない。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
前へ
次へ