伽耶(カヤ)には、日本人を引き付ける魅力がある。
私は1987年夏に初めて韓国を訪問したが、その時のテーマの一つが伽耶だった。
私は学生時代から日本各地を旅行するのが趣味で、史跡を中心に大半の所には行った。そうした中、奈良や九州などを回っていると、韓国との関係を感じることが多かった。
歴史の謎に包まれた国・伽耶と始祖・金首露(キム・スロ)のミステリー
韓国の中でも、関係が深そうなのが伽耶だった。当時は、それに関連した本も出ており、一度行ってみたいと思っていた。
伽耶の発祥の地が、釜山近郊で空港がある金海(キメ)である。軍事政権の時代だった当時、金海国際空港に降り立つと、飛行機の窓の外には、物々しく警戒する軍人の姿が見えた。
しかもソウルオリンピックを1年後に控えた時期であり、入国手続きの時も、ピリピリとした緊張感に溢れていた。
空港からまず向かったのが、伽耶の王の降臨神話の地・亀旨峰(クジボン)である。木立の中を進んで行くと、石でできた6つの卵が見えてきた。
その周りを竜が囲い、さらにその外側に亀が鎮座している。この地の降臨神話は次のようなものだ。
ある日、亀旨峰の頂から村人を呼ぶ声がした。すると天から箱が降りてきた。箱の中には6つの卵が入っていた。卵が孵ると、6人の童子になった。その6人の童子が、伽倻を構成する6国の王になった、ということだ。
そのうち、最初に孵った卵から出てきたのが、金官伽倻(クムグァンガヤ)もしくは、賀洛(カラク)国の始祖・金首露(キム・スロ)である。なお、亀旨峰の場所には、支石墓もある。
文=大島 裕史
大島 裕史 プロフィール
1961年東京都生まれ。明治大学政治経済学部卒業。出版社勤務を経て、1993年~1994年、ソウルの延世大学韓国語学堂に留学。同校全課程修了後、日本に帰国し、文筆業に。『日韓キックオフ伝説』(実業之日本社、のちに集英社文庫)で1996年度ミズノスポーツライター賞受賞。その他の著書に、『2002年韓国への旅』(NHK出版)、『誰かについしゃべりたくなる日韓なるほど雑学の本』(幻冬舎文庫)、『コリアンスポーツ「克日」戦争』(新潮社)など。
■歴史に埋もれた伽耶国を描く『鉄の王キム・スロ』【名作劇場】
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