【深発見22】ソウルの高級住宅街のど真ん中にある「夢村土城」

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高句麗鍛冶屋マウルから大通りに出ると、 西側に向かうバスのほとんどが、地下鉄2号線の江辺(カンビョン)駅に向かっている。

東ソウルバスターミナルや、龍山(ヨンサン)と並ぶソウルの秋葉原とも言うべきテクノマートのビルがある江辺駅から地下鉄2号線に乗って漢江を越えると、最初の駅が城内(ソンネ)である。

さらに次の蚕室(チャムシル)で8号線に乗り換えると次の駅が夢村(モンチョン)土城といったように、城に関する駅名が続く。

夢村土城の駅を出ると、1988年のソウルオリンピックで自転車競技や体操競技などの会場となったオリンピック公園がある。このオリンピック公園は、夢村土城という、百済時代の城砦の跡を利用して造成されている。

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さらに夢村土城の北東方面から千戸(チョノ)大橋にかけて、アパートなどの間を縫うように土盛りが続く。これを風納(プンナプ)土城という。

大洪水などにより、一部は流失しているが、それでも土盛りは、約2・7キロも続く。近年の発掘調査により、この風納土城こそが、百済の都城である慰礼城である可能性が高まっている。

この風納土城周辺には、百済以前から人が住んでいた痕跡がある。風納土城から少し東に行くと、岩寺(アムサ)洞の先史住居跡がある。漢江の上流から中流とも言うべきこの辺りまでは、先史遺跡も多く、古代から人が住むのに適した場所であった。

百済時代の土盛りと、ソウル有数の住宅街が混在する様は、古代と現代の不思議な調和をもたらしている。しかし古代と共存するのは、そう簡単ではない。

風納土城は、歴史的な価値があるだけに、発掘作業が進められている。

しかし、近隣住民にすると、発掘作業によって開発が進まないと、地価にも影響するので、歓迎されないという事情がある。

この地域で発掘作業が盛んに行われているのは、ソウルオリンピック以後、急に開発が進んだからだ。

一時予算不足により作業が中断された時期もあったが、地道に発掘調査が行われている。

高級住宅街のど真ん中だけに、近隣住民の気持ちも分かるものの、貴重な遺跡であるのは確かで、しっかり調査をし、できるだけ保存してほしいものだ。

文・写真=大島 裕史

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