イ・ビョンフン監督の傑作時代劇『トンイ』でハン・ヒョジュが演じたヒロインは、時代劇の「永遠のアイドル」かもしれない。美女で明るくて何でも前向きで聡明で……申し分のないキャラクターだ。
でも、実在した彼女は果たしてどういう女性だったのだろうか。
よく知られているように、ドラマのトンイは実在した叔嬪・崔氏(スクピン・チェシ)がモデルになっている。
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しかし、叔嬪・崔氏はほとんど歴史書に出ておらず、人物像がよくわからない。わずかに残っている史料から推定してみると……。
有力な説によると、叔嬪・崔氏はムスリ(下働きをする女性)として7歳のときに王宮にやってきたという。
当時の王宮には、水をくんだり掃除をするような下働きをする女性がたくさんいた。その一方で、女官というのは、下働きをしない。彼女たちも国家公務員であり、相応のプライドを持っていたのだ。
それによって、雑役は専門の人が行なうのだが、水をくむというのは大変な重労働で、主に身分が低い人たちが担当していた。それを「ムスリ」と呼ぶのだが、叔嬪・崔氏もその1人だったという。
しかし、ムスリなら国王に会うことは絶対にできない。それなのに、叔嬪・崔氏はどうやって粛宗(スクチョン)の寵愛を受けるようになったのだろうか。出会いのきっかけが謎めいている。
民間に伝承されている野史によると、王宮でムスリとして働いていた叔嬪・崔氏には子供が2人いたという。つまり、結婚していたか、あるいは、結婚した過去があったわけだ。
そういう既婚者を国王が側室にするというのは、とうてい考えられないことだ。それなのに、叔嬪・崔氏が粛宗の子供を何人も産んでいるというのは事実なのだ。
このように、叔嬪・崔氏は本当に謎めいているのに、ドラマ『トンイ』でヒロインは正直で活発で、不審なところが1つもない。それゆえ、トンイは「永遠のアイドル」なのだ。正真正銘なアイドルだけに、存在を決して疑ってはいけないのだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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