朝鮮王朝には27人の国王がいたが、韓国時代劇によく登場して有名になった国王はとても多い。何本も歴史ドラマを見た人なら、朝鮮王朝の国王の名前を10人以上はスラスラと言えるのではないだろうか。
韓国時代劇はどうしても朝鮮王朝の王宮ドラマが圧倒的に多いので、物語の中心には国王がどんどん出てくるからだ。
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その一方で、27人の国王の中でほとんど知られない人もいる。
たとえば、8代王の睿宗(イェジョン)、17代王の孝宗(ヒョジョン)、18代王の顕宗(ヒョンジョン)、24代王の憲宗(ホンジョン)なども時代劇に登場することがほとんどないので、今の韓国でも知名度がない。
同じように、存在がとても地味だった国王が哲宗(チョルジョン)だった。
この哲宗は歴史的にも冴えない人物だった。憲宗が22歳で急死した後、王位継承を担える王族男子が王宮には全くいなかった。
そのために、王位継承問題が混迷し、ようやく見つけ出されたのが江華島(カンファド)で農業をしていた哲宗であった。彼の親族の中に政権に逆らった王族がいて、そのとばっちりで哲宗も身を隠して田舎で暮らさなければならなかったのだ。学問する余裕もなかったので、漢字が全く読めなかった。
こんな有様では政治にかかわる資格は全くなかったのだが、王族の末席にいたという理由だけで、急に国王に指名されることになった。本当に誰もが驚く仰天人事だった。
一番驚いたのは当の哲宗だった。都から使者が迎えに来とき、哲宗は「刺客がやってきて殺される」と勘違いした。それなのに、急に王宮に呼ばれて「国王になってくれ」という。彼にとっても青天の霹靂とはまさにこのことだ。
結局、哲宗は国王になったものの学問をしていなかったゆえに政治的な能力は全くなかった。しまいに、酒と女性関係に溺れて不甲斐ない暮らしのままに32歳で死んでしまった。
そんな哲宗が急に存在がよく知られるようになってきた。
特に今韓国で人気を博している『哲仁王后』で、メインのキャラクターになっているからだ。しかも演じているのは、『愛の不時着』でもよく知られるイケメン俳優のキム・ジョンヒョンだ。
地味で目立たなかった哲宗が、人気ドラマによって急に脚光を浴びたのだから、本当に国王の評判というのはどんなことで変わってしまうかわからないものだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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