ドラマ『イ・サン』は、22代王の正祖(チョンジョ)の生涯をドラマチックに描いた時代劇だった。イ・ソジンが正祖を名君にふさわしく堂々と演じ、作品は傑作として高い評価を受けている。
このドラマでは、正祖が若いときからずっと政敵たちによって暗殺されそうになる。それだけに、イ・ソジンが扮した正祖は常に警戒を怠らなかった。実際、寝床まで暗殺団が侵入するという場面も描かれていた。
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しかし、これはドラマだけの話ではなかった。実際に正祖は、敵対する勢力から暗殺団を送られたことが何度もあったのだ。
それは、朝鮮王朝の歴史を詳しく記した『朝鮮王朝実録』でも事件として記録されている。
正祖は1776年に即位したのだが、『朝鮮王朝実録』の記録によると、1777年7月28日に暗殺事件が起こった。
そのころ正祖が住んでいたのは慶熙宮(キョンヒグン)であり、深夜まで彼が読書をしていると、怪しい物音が何度もしたので、彼は警護の者に調べさせた。そのときは暗すぎて事情を把握できなかったが、夜が明けてから大々的に調べると、不審な者たちの足跡がいくつも発見された。数人の暗殺団が侵入したのは明らかだった。
この事件は、王宮の中でも大問題になった。なにしろ、国王の命を狙う暗殺団が堂々と王宮に侵入していたのだから……。
それ以後、正祖はすぐに対策を講じた。その際に、慶熙宮の構造上の課題が浮き彫りになってしまった。というのは、慶熙宮は賊の侵入を防ぎにくい構造になっていたのである。
それがわかれば、正宮として慶熙宮を使い続けることは難しい。そこで正祖は、昌徳宮を改修して正宮を移すことにした。さらには、国王を守る親衛隊を強化し、以前よりずっと厳重な警戒を続けて、暗殺団の侵入を許さない態勢を整えた。
こうして正祖の命は守られていったのだが、彼はドラマ『イ・サン』で描かれたように、常に暗殺の脅威を感じ続けていた。
文=康熙奉(カン・ヒボン)
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