『イ・サン』は数多い韓国時代劇の中でも傑作として評価されており、今でもとても人気が高い。この『イ・サン』の演出を担当したのは、『ホ・ジュン~宮廷医官への道~』や『宮廷女官 チャングムの誓い』などの時代劇を成功させて「時代劇の巨匠」と称されたイ・ビョンフン監督だ。
【関連】名作『イ・サン』秘話。時代劇に珍しい「ウインク」を取り入れたワケ
彼は、22代王・正祖(チョンジョ)の生涯を描くドラマを企画したとき、タイトルを「正祖」でなく、本名となる「イ・サン」にあえてしている。その理由について、イ・ビョンフン監督は「人間としての正祖を描きたかった!」と答えている。つまり、国王である以前に1人の人間として正祖の生き方を示したかったのである。
そんなイ・ビョンフン監督がイ・サン役にイ・ソジンを起用したのは、この俳優が「ドラマで変化を見せることができる顔だったから」だった。
イ・ビョンフン監督は「女性視聴者が好むような凄い美男でないほうがいい」と指摘している。このように、巨匠は「多様性を持つイ・ソジンこそが適役」と確信していたのだ。さすがに観察力に優れている。
一方、ヒロインとなるソン・ソンヨンのキャスティングは、どのように行なわれたのだろうか。
イ・ビョンフン監督は、華麗で強烈なイメージよりも、純粋なイメージの女優を探し続けたという。その上で選んだのが、ハン・ジミンだった。
イ・ビョンフン監督もこのように語っている。
「純粋なイメージの女優を調べてみると、ハン・ジミンさんの人気が高かったのです。彼女なら、30代以上の女性たちの支持を受けられると思いました」
その狙いは見事に的中した。ハン・ジミンは、王を愛する一途な気持ちを素直に演じていた。その純粋なイメージは、ドラマを大いに盛り上げていた。
このように、『イ・サン』はイ・ソジンとハン・ジミンという2人の主役カップルが、最初から最後まで素晴らしい演技を続けたことで、あれほどの傑作になったのである。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
【関連】ドラマ『イ・サン』こと正祖(チョンジョ)が実際に進めた現実的な政策とは?
前へ
次へ