日本でも絶大な人気を誇った『宮廷女官チャングムの誓い』。ドラマでは料理上手で聡明で、ときの王様である中宗(チュンジョン)から求愛されるチャングムだが、実は謎のベールに包まれた人物である。
生年月日や生い立ち、いつ死んだかということも定かではないのだ。
ただ、実在しなかったわけでもかった。彼女の名は『朝鮮王朝実録』にしっかりと明記されているのだ。
『朝鮮王朝実録』とは、初代王・太祖(テジョ)から第27代王・純宗(スンジョン)まで27代・519年の朝鮮王朝の歴史を詳細に記した歴史書である。
1413年に太祖の時代か編纂が始まり、政治、外交、経済、軍事など歴代王の事跡が各代の王ごとに編年体で記述されている。その数、実に1967巻948冊。たとえ時の王であっても記述に介入できない厳格なもので、1997年にはユネスコ世界記録遺産にも登録されている。
この『朝鮮王朝実録』の中で第11代王・中宗の治世を収めた『中宗実録』に、チャングム(長今)の名が数回登場する。
実録では彼女が医女であることしか記されていないが、「余の病は女医チャングムが知っている」という中宗の言葉があり、ドラマはその史実をもとにイメージを膨らませた。つまり、『チャングムの誓い』は空想時代劇とも言えるのだ。
『朝鮮王朝実録』の実物を管理する韓国の国家機関・ 国史編纂委員会によると、『中宗実録』の一部にはしっかりと「長今(チャングム)」もしくは「大長今(テチャングム)」の文字が確認できる。まさにここに、チャングムが実在した証が記されているのだ。
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