朝鮮王朝の歴史を正確に記した『朝鮮王朝実録』には、医女のチャングム(長今)の記録が10カ所ほどある。『宮廷女官チャングムの誓い』にも登場する11代王・中宗(チュンジョン)の時代なので、史実とドラマの歴史的な背景は重なっている。
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そして、チャングムの記録はしばしば称賛の言葉に彩られ、中宗から下賜された褒美も華やかだ。とりわけ、病魔に苦しんだ中宗が回復の兆しを見せたとき、医師や薬剤師たちに米と豆を6石、あるいは10石を与えた。しかし、チャングムだけには特別に15石という破格の俸禄が授けられた。この数字の違いは、中宗のチャングムに対する深い敬意の証しである。
ときに、宮廷で用意された薬がその効能を示さないと、他の医官や薬剤師たちは冷たく処罰された。しかし、その場にいたチャングムは、王妃の出産を成功させた手柄によって、ただ1人、中宗自らの言葉でその罰を免除された。この出来事は、まさに中宗の彼女に寄せる信頼がとても大きかったことを示している。
やがて、チャングムは中宗の身近な相談相手となり、中宗の病を語る言葉の中には「チャングムの医術は他の者よりも卓越しており、今や王宮を行き来して看病しているのだから、俸禄は彼女に授けよ」との讃辞が刻まれた。
そのとき、彼女は「大長今」(テジャングム)という尊称を授けられている。「大」とは国王が認めた者だけに許された栄光の文字。ゆえに「大長今」とは、中宗がその偉業を認めて授けた名に他ならない。
そして、何よりも胸を打つのは、中宗が「余の病状は医女が知っている」と述べたその一言である。これは、他の誰でもないチャングムこそが中宗の身体と心を知り尽くした存在であることを、何よりも雄弁に物語っている。
波乱に満ちた宮廷で、チャングムは知恵と技をもって、自らの名を歴史に刻んだ。こうした偉大な女性を主人公にしたのが『宮廷女官チャングムの誓い』であり、イ・ヨンエが素晴らしい表現力でチャングムを演じていた。
構成=康 熙奉(カン・ヒボン)
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