今でも日本で息の長い人気を誇る韓国時代劇ドラマ『トンイ』。その主人公トンイを演じたハン・ヒョジュンは『トンイ』のあと、映画でふたたび時代劇に挑戦している。
2012年に韓国で公開され、日本でも2013年2月に公開された『王になった男』がそれだ。実は現在、テレビ東京の韓流プレミアで放送中のドラマ『王になった男』は、先に映画のほうが作られ、ドラマのほうは映画のドラマ化版となる。
同作品は、童話『王子と乞食』をモチーフにした韓流時代劇。“悲劇の王”とされる朝鮮王朝・第15代王の光海君(クァンヘグン)と、彼に入れ替わった下級階層の男の物語で、今やハリウッドスターの仲間入りを果たしたイ・ビョンホンが一人二役に挑戦した。
ハン・ヒョジュにとって、イ・ビョンホンは所属事務所の先輩。偉大な先輩との初共演である。その映画のことはもろちん、時代劇を演じることは女優にとってどんなことなのだろうか。
―所属事務所の先輩であるイ・ビョンホンさんとの映画『王になった男』でのハン・ヒョジュさんの役割は?また『トンイ』との違いはなんでしょう?
「まず、今回の作品では中殿(王妃)です(笑)。トンイは事実上、側室にしかなれませんでしたよね。“あんなに頑張ったのに~”と客観的に見て思いました。そのときの気持ち(恨を)を晴らすような思いといえばよいでしょうか(笑)。
また、トンイは明るくてポジティブでしたが、中殿は心の傷や痛みが多く、笑うシーンはあまり見せることがないんです。どちらかというと、苦難をじっと耐えるというキャラクターでしょうか。トンイとはまた一味違った姿をお見せすることができたと思います」
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―そのようなキャラクターの変化を同じ時代劇の中で表現するのはなかなか難しいのではないかと思うのですが?
「私はなんでも忘れてしまうほうなのです(笑)。むしろ、自分ではひとつのキャラクターから脱皮する姿を見てほしいと思うタイプだと思います。“もっと要求してください!”とか“わたしは他のこともできます!”とか(笑)。なので『王になった男』での中殿役も私にとっては、とてもやりがいのある役でした」
―『トンイ』に続いて『王になった男』も時代劇でした。女優にとって時代劇とは? 特別に難しい部分や、現代劇との差はなんでしょう?
「時代劇と現代劇。難しい面というよりも、違った面というほうがしっくりきます。どうしても言葉の使い方などが違う面があるので、現代劇とは少しアプローチの方法が異なります。
私が常に考えていることは、演技というのは、ハン・ヒョジュという人格と、キャラクターの色を近づけていくことだと思っています。
どちらか一方に偏らず、与えられた役割を最大限にこなしつつ、ハン・ヒョジュという個性をどこまで表現できるか。これが演技をするうえでの難しさでもありますし、魅力であり、醍醐味でもあります」
―時代劇の演技をするうえで、特別に意識している点はありますか?
「やはり言葉づかいでしょうか。どうしても現代では使わないような言葉や、時代劇特有のトーンがあるので、それが自然と口から出てくるように練習を重ねているところです」
―ハン・ヒョジュさんが時代劇を演じてみて、その魅力はどこにあると思いますか?
「そうですね……。衣装と色合い、音楽。あとはあの独特な雰囲気ではないでしょうか。一回やってみると、あの魅力にハマってしまって抜け出すのに苦労します(笑)。しばらく、あの世界から戻って来れなかったりしますよ」
―日本にも韓流時代劇のファンの方が増えています。最近では、女性だけではなく男性ファンも多いようです。時代劇には壮大なロマンが隠れているからだと思いますが、ハン・ヒョジュさんはどのように思われますか? 視聴者にとっての時代劇の魅力とは?
「韓流時代劇は、韓国の歴史を知ることができるのと同時に、当時の衣装や風景など、みどころを数多く提供できるという点で、魅力のある作品が多いですよね。
また、自分の感情や意見を直接伝える最近の人たちとはちがい、独特の方法や感情表現でそれを見せてくれます。
もちろん、そこには愛情やロマンスも含まれます。そういった意味で、“もうひとつの世界”として、現代のひとたちの支持を集めることができているのではないでしょうか。
また、いろんな人物の感情だったり関係性が複雑で濃密というところにも人気の秘訣があるのかも知れません。見終わったあとに、人生の糧になるようなエピソードも多いのも時代劇の魅力ではないでしょうか」
―最後に、日本の視聴者に『トンイ』の一番の魅力を紹介するなら?
「トンイというキャラクターを通していろいろなことを感じてもらえると思います。彼女は過去の自分を乗り越えて、人生を肯定的に生きて行こうとします。
そういう意味で、キャラクターの持つ力が存分に活かされていたドラマになっているのではないでしょうか。トンイを通じて、視聴者の方々の人生がより明るく、ポジティブな方向に進むようになればよいと思っています」
文=慎 武宏
*このインタビュー原稿は2012年6月に行なわれたものを、大幅に加筆・修正したものです。
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