韓流時代劇の魅力は、演じる役者たちの確かな演技力にある。リアルで感情が込められたその演技力に魅了されたファンも多いだろう。
そんな名優たちは韓流時代劇をどのように考えているのだろうか。韓流時代劇の名優たちの過去のインタビューを通じて、韓流時代劇の魅力を考察する。
第3回目は数多くのヒット作に主演して“韓流時代劇のカリスマ”と呼ばれるチェ・スジョンだ。
チェ・スジョンは“韓流時代劇のカリスマ”とも言える存在だ。デビュー当初はメロドラマ俳優として活躍していたが、2000年代の始まりとともに彼は韓ドラ時代劇スターとなった。
最初のヒット作は、2000~2002年にかけて韓国のKBSで放映された『太祖王建(テジョ・ワンゴン)』だ。高麗(コリョ)を建国した地方豪族ワンゴンの一生を描いた大河ロマンで、韓国では最高視聴率60・2%を記録。チェ・スジョンが時代劇俳優としてブレイクするきっかけとなった。
「『王建』の前はメロドラマが多かったので、キャスティングされたときは外見が時代劇に似合わないと指摘されたこともありましたが、ドラマが進むにつれて、そんな指摘もなくなった。時代劇が与える印象は現代劇よりも強く、視聴者に強烈なインパクトを残すようです(笑)。自分のイメージに変化が生まれ、時代劇は俳優生活において大きな転換点になりました」
2002年には『太陽人イ・ジェマ~韓国医学の父~』に主演。19世紀に「四象医学」を確立させた医学者にして哲学者のイ・ジェマの生涯を描いたこの作品で、チェ・スジョンはアクションだけではなく、表情1つひとつに知的な雰囲気を漂わせる好演を披露した。
「キャスティングか決まってからすぐ、イ・ジェマが唱えた四象医学を学びました。イ・ジェマについての本もたくさん読みました。そうした研究の末に感じたのは、イ・ジェマは涙をたくさん流した人であり、愛する人のためにすべてを捧げた人だということ。そんな素晴らしい人物を、ドラマとはいえ後世に伝える役目を任されて光栄でした」
そして、日本でもヒットし何度も再放送されている『海神(ヘシン)』に主演。奴隷の子として生まれるも、やがて海の覇者となったチャン・ボゴを演じ、不屈の精神と壮絶な闘いを見事に表現。『海神』はアメリカの国際エミー賞の本選にも出品され、世界各国で高い評価を得た。
「私が演じるチャン・ボゴという人物を通じて、夢は叶うというメッセージを伝えたかった。時代劇を見る年齢層は高いと決まっていますが、『海神』は若い人たちにたくさん見てもらいたいと意識して作られました。それが日本にも伝わったのではないでしょうか。
また、チョンファというひとりの女性をめぐってチャン・ボゴとヨンムンの三角関係が出来上がり、その関係がどうなるかというところも面白かったのでは? 愛は国境を越えると言いますからね。日本の人たちも感情移入しやすかったのではないでしょうか」
そう振り返るチェ・スジョンは2006年には渤海国を建国した高句麗人テジョヨンの波乱万丈の一代記『大祚栄(テジョヨン)』に出演。同作は全134話の長丁場のストーリーにもかかわらず、韓国では常に高視聴率をキープし、最高36・8%奴を記録した。
「『大祚栄』の魅力は、主人公テ・ジョヨンが無から有を作り出す人物だったこと。奴婢から一国の王にまで上り詰めます。夢や希望、そして大きな偉業を体当たりで成し遂げようとする英雄のストーリーが、あのドラマの大きな魅力でした」
『太祖王建』を機に、『太陽人イ・ジェマ』『海神』『大祚栄』など数々の時代劇で主演をつとめてきたチェ・スジョン。そんな彼だからこそ、韓流時代劇が日本でも人気を呼んでいることを嬉しく思っている。
「日本のファンたちがドラマについて詳しく知りたい、ドラマを入口にして韓国の歴史も知りたいと、思っていることを嬉しく思います。韓流時代劇は、フィクションとノンフィクションをうまく融合させ、表現しようとする精神をドラマに注入しています。つまり、韓流時代劇の特長は、肯定的な力にあると思うんです。そのような長所を日本のファンたちは好んでいてくれているのだと思いますね」
フィクションとノンフィクションの融合。それが韓流時代劇の最大の魅力だとするチェ・スジュンの言葉には、100%同意したいと思う。歴史の実話に基づいて、新しい解釈やエピソード、さらには現代風にアレンジされた史実が加えられていくことで、ストーリー展開がより面白くなり、視聴者たちをひきつける。
これからもチェ・スジョンの情熱が込められたその演技と作品に、熱視線を送っていきたい。
◇チェ・スジョン プロフィール
1962年12月18日生まれ。87年にドラマ『愛の花咲く木』でデビュー。『初恋』で国民的人気俳優に成長したあと、『太祖王建』を機に、『海神』『大祚栄』など数々の時代劇で主演を務めてきた。
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