バラエティ番組やファンミーティングで披露される韓国俳優の歌唱力には、いつも驚かされる。
俳優の肩書を超え、ドラマのOSTに参加するケースも珍しくない。今回はその背景とともに、数多くの“歌ウマ”韓国俳優の中から、筆者が個人的にぜひ歌声を聴いてほしいと思う5人を紹介する。
韓国では、俳優を体系的に育てる教育システムがある。1997年のIMF通貨危機後、当時の金大中政権は「情報通信産業」「文化コンテンツ産業」を国家戦略として育成し、それがK-POP、ドラマ、映画などを含む「韓流」の原点になった。これを機に演劇・映像・ミュージカルを専門的に学べる大学が充実し、演技と歌の基礎を徹底的に身につける土壌が整っている。
また、ミュージカルとドラマを行き来する俳優が、日本に比べてはるかに多い。
チョ・ジョンソクは、『賢い医師生活』でも、劇中のバンドで惜しみなくその歌唱力を証明し、ミュージカル『ヘドウィグ』でも主演を務めた。同じく『賢い医師生活』に出演したユ・ヨンソクは、ミュージカル『ヘドウィグ』でもチョ・ジョンソクとダブルキャストで出演している。他にもチョ・スンウ、カン・ハヌル、チ・チャンウク、チョ・ミドなどがミュージカル俳優としても有名だ。
さらに、K-POPアイドルグループ出身の俳優が多いことも特徴だ。かつては「演技ドル(ヨンギドル)」という呼ばれ方があったように、短いアイドル生命の先を見据えて、練習生のうちから歌・ダンス・演技を総合的に学ぶシステムがあり、俳優へ転身するケースが多いのだ。ZE:A出身のパク・ヒョンシクやイム・シワン、元gugudanのキム・セジョン、元JYP練習生のアン・ヒョソプやファン・イニョプなどがその代表例だ。
漢陽大学演劇映画科出身。『テプン商事』で注目を集める一方、OSTにも2曲参加している。実は中学生の頃にSM・JYP・YGなど大手音楽事務所のオーディションに応募していた。KBS『イ・ヨンジのザ・シーズンズ』ではエイミー・ワインハウスの『Valerie』を披露し、控えめな歌い出しから後半はソウルフルな歌声を響かせて会場を沸かせた。『テプン商事』の内気な役柄とのギャップに驚かされる。
ソウル芸術大学演技科出身。『その年、私たちは』『サイコだけど大丈夫』などの、コミカルで印象的な名バイプレイヤー。ミュージカル出身の確かな技術があり、透明感と安定感のある歌声は俳優の域を超えている。2023年、元LOVELYZのイ・ミジュとのユニットで、音楽番組にも出演した。
『無人島のディーバ』で“歌える俳優”としての魅力が開花。2025年の大ヒット映画『K-POP! デーモンハンターズ』の人気曲『Golden』のカバーも話題に。伸びやかな高音が持ち味。過去の動画と比べると歌唱力の成長は明らかで、ストイックな努力家としての姿が現在の歌唱力につながっている。
ソウル芸術大学演技科出身。『私の夫と結婚して』の「ゴミ夫」役が日本でも話題に。2020年には、トロット曲『칼퇴근(定時退勤)』を発表。2025年7月、自身が大ファンだと公言するMonday Kizの名曲『운명(運命)』を本人とコラボリメイクし、甘く力強いボーカルで新たな一面を見せている。
韓国芸術総合学校出身。『オク氏夫人伝・偽りの身分 真実の人生』『トラウマコード』などで、第61回百想芸術大賞 放送部門 新人演技賞を受賞し、2025年、もっともブレイクした若手俳優の一人。俳優として注目を集める一方、2025年、ロイ・キムとのデュエット曲『시간이 멈췄으면(時間が止まったなら)』を発表。声質が似ている2人の柔らかな中低音が重なり合い、サビではまるで一人の声のように溶け合う心地良さを届けてくれる。
主演俳優から名バイプレーヤーまで、演技でも、歌でも、人を動かす力を持つ韓国の俳優たち。演技とはまた別の一面を感じることで、俳優としての魅力がさらに立体的になり、これからも“歌える俳優”から目が離せない。
(文=田名部 知子)
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