2000年代に大きく発展したといわれている韓国ミュージカル。最近では、日本の映画館で韓国のグランドミュージカルが観られる『韓国ミュージカル ON SCREEN』が展開されるなど、日本でも注目が高まってきている。
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ミュージカルシーンで活躍している現役アイドル・アイドル出身の俳優は実は多い。アイドルとしてデビューするまでに、過酷なボーカル・ダンスレッスンや表情・演技練習などを経てきた彼ら・彼女らにとって、自身の実力を発揮できるもうひとつのステージといってもいいのかもしれない。そこで今回は、アイドルがキャストして出演したミュージカル作品について紹介してみたいと思う。
①『レベッカ』
「わたし(I)」役としてデビューを果たしたのが、Red Velvetのウェンディ。ミュージカル『レベッカ』は、ダフニ・デュ・モーリエ原作・ヒッチコック映画を基にしたサスペンス作品。ミュージカル『モーツァルト!』や『エリザベート』を手がけた作曲家シルヴェスター・リーヴァイと、脚本家ミヒャエル・クンツェによる力作との呼び声も高い。彼女は主人公“わたし”として繊細な感情の変化を演じている。
あるインタビューで、彼女は「心の中にあったミュージカルへの夢が、ようやく花開いた。良い機会を得て感謝している」とも語っていた。Red Velvetの楽曲でものびやかな歌声が印象的だったウェンディ。ミュージカルでのこれからの活躍に期待が膨らむばかりだ。
②『メンフィス』
黒人音楽を白人社会に広めた、伝説的DJデューイ・フィリップスの実話を基にした作品。1950年代のアメリカ南部を舞台に、ロックンロールで社会を変えようとするDJヒューイと、才能あふれる歌手フェリシアの夢と愛を描いたミュージカルだ。ヒューイ役を務めたのが、歌唱力に定評のあるボーイズグループ・BTOBのチャンソプ。2023年の初演に続いて2025年の再演でもヒューイ役を熱演した。
③『モーツァルト!』
2010年に韓国で初演されてから、大型ライセンスミュージカルの定番となった作品。脚本・歌詞をミヒャエル・クンツェ、音楽をシルヴェスター・リーヴァイの名コンビが手がけている。天才作曲家ヴォルフガング・モーツァルトの「光」と「影」の人生に迫るミュージカルだ。幼少期に「奇跡の子」と称えられた彼は成長後、自らの才能を試すためウィーンへ。愛するコンスタンツェと結婚しながらも、栄光と挫折の狭間で苦悩する姿、そして常に寄り添う「才能の化身」アマデとの対峙が描かれる。
初演で主演に抜擢されたのが、JYJのキム・ジュンス。当時の重圧とミュージカルファンたちからの視線はかなり厳しかったそうだが、実力が認められその後は『エリザベート』『ドラキュラ』『デスノート』など続々と話題作品に出演している。
④『愛の不時着』
韓国を代表する、スタジオドラゴン制作の大ヒットドラマ『愛の不時着』がミュージカルに。パラグライダー事故で北朝鮮に不時着した財閥令嬢セリと、彼女を匿う軍人ジョンヒョクの愛を描いた本作品。
ジョンヒョク役はB.A.P出身のユ・ヨンジェ、ク・スンジュン役はPENTAGONのジンホとn.SSignのKAZUTAがWキャストで務める。セリ役はジョン・ユジ、ソ・ダン役にはKARAのギュリとソン・ミンジェが演じる。
⑤『マリー・アントワネット』
遠藤周作の小説を原作に、ミヒャエル・クンツェが脚本・作詞、シルヴェスター・リーヴァイが作曲で制作された作品。華やかな宮廷で民衆の訴えを無視される王妃マリー・アントワネットが、スキャンダルや恐怖政治に巻き込まれ悲劇的に処刑されるまでを描く。民衆の声と権力闘争の中で、真の正義とは何かを問い続ける観察者マルグリット・アルノーの視点が重厚な物語を彩る。
スウェーデンの貴族アクセル・フェルセン伯爵役には、BTOBのチャンソプやNU'ESTのミンヒョン、NCTのドヨンなど、アイドルたちが抜擢されることが多い。
⑥『ファントム』
19世紀末のパリ、オペラ座の地下に潜む青年エリックは、仮面で醜い顔を隠し「ファントム」と恐れられる。歌手を夢見るクリスティーヌの才能を開花させるが、嫉妬したトップ歌手カルロッタの陰謀が悲劇を招く。韓国版はエリックの出生や人間性に光を当て、喜怒哀楽を歌と演技で描いている。
韓国版でエリックを演じたのが、ベテランアイドルグループSUPER JUNIORのキュヒョン。普段のステージで見せるお茶目な姿とはまた一味違う、艶のある歌声で演技をする彼の姿を知れるミュージカルだ。
応援するアイドルが出演しているミュージカルを観に行ったことをきっかけに、舞台やミュージカルの沼にハマったという話をよく耳にする。そして、沼の深さは相当らしいとの噂も。実は筆者も「いつか韓国ミュージカルの観劇にチャレンジしたい!」と密かに思っている韓国アイドルオタクの一人だ。私が新しいオタクの扉を開く日も、そう遠くはないかもしれない。
(文=豊田 祥子)
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