ドラマは主役だけでは成り立たない。特に、味のあるバイプレーヤーは、複雑な人間関係のドラマに欠かせない存在であり、そうした場面で個性を発揮していたのがチェ・ジョンウさんとソン・ヨンギュさんであった。
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チェ・ジョンウさんは、ドラマ『華麗なる遺産』(2009年)が強烈に印象に残っている。有能な弁護士でありながら企業乗っ取りを企む野心家に扮していたが、見ている人に胸騒ぎを起こさせる存在感を持っていた。
以後も、『いとしのソヨン』(2012~2013年)、『主君の太陽』(2013年)、『青い海の伝説』(2016~2017年)、『シーシュポス: The Myth』(2021年)など多数のドラマに出演してきたが、中でも『オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-』(2024~2025年)が鮮烈だった。
このドラマは、イム・ジヨンが演じたヒロインが奴婢から両班令嬢オク・テヨンに生まれ変わって法律家として役人の不正を摘発していく作品であったが、チェ・ジョンウさんは悪徳官僚の典型のような巨悪パク・ジュンギに扮していた。
最後までドラマをかきまわす役で、チェ・ジョンウさんが演じると本当に凄味があった。このドラマを見たばかりだったので、2025年5月27日に亡くなったことが信じられない気持ちだ。享年は68歳だった。
 
前述した『オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-』には、ソン・ヨンギュさんも出演していた。彼が演じたのは本物のオク・テヨン(ソン・ナウン)の父親オク・ピルスンである。序盤だけの出演だったが、柔軟な笑顔を見せる好人物を温かく演じていた。
ソン・ヨンギュさんといえば、記録的に大ヒットした映画『エクストリーム・ジョブ』(2019年)でチェ班長の役を好演して、存在感を強く残している。
数多くの秀作ドラマの常連でもあり、『花郎<ファラン>』(2016~2017年)、『ストーブリーグ』(2019~2020年)、『この恋は不可抗力』(2023年)、『わたしの完璧な秘書』(2025年)などにも出演していた。
バリバリの現役俳優であっただけに、2025年8月4日、京畿道・龍仁市に停車していた車の中で亡くなっていたことは衝撃的であった。享年は55歳だった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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