セリフが少ない。その分、目の演技で他を圧倒する存在感を放っている。それが、ディズニープラス初のオリジナル韓国時代劇シリーズとなった『濁流』に主演するロウンの印象だ。
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これまでのロウンと言えば、長身を生かしたルックスと軽妙な爽快感というイメージが先行していた。しかし、『濁流』では、序盤からロウンが演じるチャン・シユルは、正体不明の硬骨漢として登場する。鋭い眼光、無頼、服従しない強さ…そうした孤高の男が、ロウンの演技力によって研ぎ澄まされていく。
ドラマの設定を見てみよう。チャン・シユルが現れた場所は、朝鮮王朝時代に物流を仕切った船着場の麻浦(マポ)だ。
ここは、労務者から搾取することだけを考えている元締めと賄賂で蓄財を増やす悪徳官僚が跋扈する無法地帯になっていた。そして、どんなに働いても満足に稼ぎをもらえない労務者の1人がチャン・シユルだった。彼にはかつて大きな夢があった。それは、科挙に合格して武官になって国防の最前線に立つことだった。
しかし、祖母が再婚した経歴を理由に科挙の受験資格を得られなかった。さらに、役所から不当な差別を受けた末に、理不尽な放火犯にされてしまった。
絶望して逃亡者となったチャン・シユル。流れ着いた先が麻浦だった。そこでは信じられないほどの不条理がはびこっていたが、何が何でも生き抜いていかなければならない。少しでも油断すると濁流にのみこまれてしまうのだ。
そんなチャン・シユルを取り囲む人たち…幼なじみであった捕盗庁(ポドチョン)の従事官チョン・チョン(パク・ソハム)、大商人の娘チェ・ウン(シン・イェウン)、元締めとして成り上がっていくムドク(パク・ジファン)。こうしたキャラと絡みあいながら、チャン・シユルは自前の腕力で自分の人生を切り開いていく。
そんな男をロウンが寡黙に演じていて、新境地を開いたという高い評価も受けている。その「新境地」は、これから兵役で芸能界から離れるロウンの素晴らしい置き土産になることだろう。
これだけは言える…『濁流』は、ロウンの底知れない俳優魂を堪能できる作品となっている。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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