Netflixシリーズ『おつかれさま』は、まるで大河のようなドラマだった。パク・ボゴムはグァンシクを演じ、IUはエスンに扮していた。舞台になっているのは済州島(チェジュド)であり、ヒロインのエスンは島の独特な風土の中で育った女性だった。
若き日のエスンには、色鮮やかな夢が胸いっぱいに広がっていた。「ソウルの男と結婚して詩人になる」ということが、彼女の描いた未来図であった。だからこそ、素朴で不器用なグァンシクに対しては、あえて冷たく距離を置いていた。
しかし、運命は2人をそっと包み込み、やがてグァンシクとエスンは釜山(プサン)までの逃避行を果たす。まだ高校生という若さにもかかわらず、その無鉄砲ともいえる情熱と行動力は鮮烈だった。
やがてエスンはグァンシクと結ばれた。その後、中年になったエスン(演者ムン・ソリ)には、静かに燃える反骨の炎が宿っていた。社会の冷たい偏見、男尊女卑という錆びついた鎖を断ち切りたいという強い想い。それを形にしたのが、漁村組合長への挑戦であった。
対立候補は不正なやり方で票を買おうとしたが、エスンはまっすぐな言葉と行動で住民の心をしっかりとつかんだ。そして、彼女はその選挙に見事勝利し、風を変えたのである。
そんなエスンの娘クムミョン(演者IU)には、母譲りの誇り高さと気品があった。婚約者のヨンボム(演者イ・ジュニョン)は誠実でやさしい青年だったが、その母親はまるで氷のように冷たく、クムミョンを決して受け入れようとはしなかった。
彼女がいかに知性と美しさを備えていようとも、相手の母はそれを認めなかった。さらに、貧しさを理由にクムミョンの家族を蔑んだ。
クムミョンは深く苦しみながらも、大きな決断を下した。愛を失っても、自尊心と家族の誇りを守らなければならないと悟ったのだ。そして彼女は婚約を破棄した。やがて、心やさしい伴侶と結ばれ、自らの力で事業を興した。
『おつかれさま』は、済州島出身の母子が、古い慣習を打ち破って強い信念で人生を切り開いていくドラマなのである。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
■【関連】【究極セレクション】『おつかれさま』で鮮烈だった女性キャラのランキング「ベスト5」
前へ
次へ