韓国ドラマの一大特徴になっているのが「主役2人だけでなく周囲の登場人物の人生も丹念に描いていく」というスタイル。ときには「果たして主人公は誰?」とわからなくなるほど周辺人物の描写が多すぎるドラマもたくさんある。つまり、「群像劇こそ韓ドラの真骨頂」と実感できる。そんな群像劇の代表的なドラマをピックアップしてみよう。
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●『ミセン-未生-』(2014年)
〔視聴ポイント〕大手商社を舞台にした社内の人間模様が本当に多彩に描かれていて、エピソードがとてつもなく面白かった。物語は、主人公となった新入りの契約社員チャン・グレ(イム・シワン)を通して、組織に生きる人たちの悲劇と喜劇がまんべんなく描写されている。
その中でも、上司のオ・サンシク(イ・ソンミン)がとても魅力的なキャラクターとなっており、彼を中心としたチームの喜怒哀楽を感動的に見せてくれる。さらに、ドラマの中では、新入社員の奮闘、社内の確執、パワハラやセクハラの実態、人事査定などが劇的に取り上げられていた。
●『刑務所のルールブック』(2017-2018年)
〔視聴ポイント〕登場人物の設定がとても興味深い。監獄という密室の中で本性をあらわす男たちの表と裏が巧みに描かれている。野球界のスーパースターが、襲われた妹を救おうとして過剰に暴力をふるって刑務所暮らしになる、という始まりからスリリングだ。
そんな彼が刑務所で見たものは、監獄では金さえあればなんでも揃えられるという現実と、刑務所の中は様々な人生の縮図という物語性だった。それぞれの事情を抱えた登場人物の過去と現在が鋭く描かれており、間違いなくヒューマンドラマの傑作だ。
●『椿の花咲く頃』(2019年)
〔視聴ポイント〕サスペンスの要素もあってドキドキするような展開が待っているのだが、基本的には海辺の町の人情物語である。スナックを開くシングルマザーのドンベク(コン・ヒョジン)に惚れた警察官ヨンシク(カン・ハヌル)のキャラクターが抜群にいい。しかも、彼を囲む地元の人たちの生活感が笑いに満ちていて、見ていてホッとさせられる。
ところが、場面が一転することも多い。恐ろしき殺人犯が町にまぎれこんで、ドンベクが危機にさらされる……こんな感じで最後までスリル満点なのだが、ドラマを盛り上げる脇役が名人だらけなので、アクセントがあるストーリーに素直に没入できるだろう。
●『ストーブリーグ』(2019~2020年/SBS)
〔視聴ポイント〕パク・ウンビンが演じたイ・セヨンは、低迷する野球チーム「ドリームズ」の運営チーム長。新しくやってきたゼネラル・マネージャー(GM) のペク・スンス(ナムグン・ミン)のやり方があまりに斬新すぎて反発するのだが、結局は2人で協力して「ドリームズ」を強いチームにしていく。
野球が題材になっているが、ストーリーに普遍性があるので野球を知らなくても心から楽しめる。このドラマの本質は停滞した組織を変えようとする人生ドラマであり、登場する野球選手たちの生き方がとても興味深い。
そういう意味でも、みんなが明確な目的を持った群像劇というのは、見ていて気持ちがいい。それにしても、ナムグン・ミンが演じるペク・スンスが本当に魅力的な人物で好感度が高い。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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