そんなふうに孫のジウが過去に縛られ、自分の殻に閉じこもっている姿を見かねた祖父(財閥会長)が、特別な遺産としてこっそり彼に与えたのが、抵当に入っている古びた古書店(一軒家)。
祖父いわく「私の宝物だ。売却や譲渡は許さない。これを機に再出発するんだ」。祖父の思いも知らず、「こんなもん、もらってどうするんだー!と不平を言いつつ、ジウが思いついたのは、昼だけ営業するカクテルバーを開くこと。
ここに、“ある取引”によりフレンチシェフを夢見る貧乏ヒロイン、ソ・ジュンヒが第一号従業員として加わることから物語は始まっていく。
薄々察した人もいるかと思うが、この設定、まさに『コーヒープリンス1号店』。はじめは横柄な態度でソ・ジュンヒをこき使う“オレ様ぶり”のジウだが、気になる女の子をからかいたくて意地悪をする小学生にしか見えず、憎めないことこの上なし。
雇われた身ゆえジウに逆らえず、シェフになるという夢もあるため、ジウをおだてながら奮闘するソ・ジュンヒも愛らしい。
また、本作ではコーヒーではなく、カクテルを提供する場が主人公ジウの心を表す鍵となるが、なぜカクテルなのか、夜のイメージが強いカクテルをなぜ昼しか提供しない(営業しない)のか、その答えが徐々に明らかになっていく展開も心温まるものが。
一見ちゃらんぽらんな酒好きだが、一人ひとりに合わせたカクテルを作り出すジウの心根の優しさや繊細さに、ヒロイン、ソ・ジュンヒ同様、放っておけなくなること請け合い。何より、どこにも居場所がなく海外に逃げ場を求めていたジウが、ソ・ジュンヒの明るいエネルギーに癒やされ、祖父がくれた“宝物”の空間を、自身が必要としていた“心を癒す場所”として作り出していく変化がいい。
と同時に、観ている側も、ジウを通してお酒やカクテルバーのイメージがいい意味で変えられるという面白い発見があった。
加えて、ソ・ジュンヒの幼なじみヨングァン(扮ペク・ソンヒョン)、ジウの亡き親友の妹で彼を追い回すイェジ(扮キム・ユネ)も含めた複雑な四角関係も繰り広げられていく。
「そこ邪魔するなよー!」な妨害とすれ違い、わかりやすい嫉妬合戦など、もどかしい恋模様に“じれキュン”もあり、韓国ラブコメのド定番詰め込みセット。とはいえ、誰もが心の傷を抱え、本当の悪者は出てこないため、優しい気持ちで見守れる1本になっている。
文=高橋尚子(エンタメライター)
☆作品情報
『君のハートに魔法をかけろ』
製作年:2020/韓国/全16 話/2021 年12 月14 日、韓国「seezn」にて公開
出演:ソンジュン、イム・ジヨンなど
【作品リリース情報】
DVD SET1&SET2、レンタルVol.1-10絶賛リリース中
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発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
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