映画『ベイビー・ブローカー』は子供を育てられない人が赤ん坊を預けるベイビー・ボックスがストーリーの端緒となり、一度は子供を捨てた母親が同行してブローカー2人と一緒に子供を売りに行くロード・ムービーである。
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怪しいブローカーながら人間味があるサンヒョン(ソン・ガンホ)、その相棒で自分も親に捨てられた過去を持つドンス(カン・ドンウォン)、ブローカーを追う刑事スジン(ペ・ドゥナ)とイ刑事(イ・ジュヨン)、そして、子供の母親ソヨンを演じているのがIU(イ・ジウン)である。
このように、韓国を代表する俳優たちがこぞって出演して、『ベイビー・ブローカー』の随所に臨場感あふれる名シーンが展開されている。その中で、IUの存在感が際立っていて、彼女が見せてくれる表情の一つひとつが本当に印象深い。
IUといえば、傑作として評価が高い『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』で不遇な生い立ちの中で苦しむ薄幸の女性ジアンを演じて絶賛を浴びたが、今回の『ベイビー・ブローカー』での演技も改めて「表現力の天才」であることを証明していた。
特に強調すべき演技を取り上げて見ると……。
・雨の中で思い詰めて子供をベイビー・ボックスの前に置いていく母親の悲壮感
・子供を買う予定の夫婦が理不尽な態度を示したときの憤激と罵倒の荒々しさ
・子供の将来を思うがあまり結局は手放す覚悟をしたときの母性愛
以上のような感情を表わすとき、IUの表情がめまぐるしく変化して人間が持つ多様性を如実に示してくれた。
その存在感は本当に凄かった。
IUが長編の商業映画に出演したのは『ベイビー・ブローカー』が初めてなのだが、この映画を通して世界中の映画ファンにIUが鮮烈な印象を残したに違いない。
今年のカンヌ国際映画祭でも注目されたIU。元は抜群の歌唱力を誇る最高級の歌手なのだが、俳優として今後も世界規模で人気を獲得していくことだろう。そのことを確信させてくれたのが、『ベイビー・ブローカー』で見せた卓越した演技力であった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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