『ホジュン~宮廷医官への道~』を大成功させて「韓国時代劇の巨匠」と称賛されるようになったイ・ビョンフン監督は、時間をかけて次回作を検討していた。
彼には気になっている歴史上の女性がいた。
彼女を知ったのは、『ホジュン 宮廷医官への道』の主人公だった許浚(ホ・ジュン)のことを『朝鮮王朝実録』で調べているときだった。医術の関連個所を見ていて出てきた「長今(チャングム)」という医女に惹かれて、「彼女を主人公にした時代劇を作ったらどうだろうか」と構想した。
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しかし、難点があった。すでに『ホジュン~宮廷医官への道~』で朝鮮王朝時代の医官のドラマを作ったばかりだった。次回作も医女にすれば作品のイメージがかぶる恐れがある。それで躊躇していたのだが、名案が浮かんだ。
「ドラマの前半を王宮の料理人にして、後半に医女に変わるストーリーにすればメリハリがついていい」
そういうアイディアが気に入ったイ・ビョンフン監督は、次回作のヒロインをワクワクさせる思いで確定させた。そうやって制作されたのが『宮廷女官 チャングムの誓い』(原題は『大長今(テジャングム)』)であった。
イ・ヨンエを主役にしたドラマは2003年9月15日からMBCで放送を開始した。前半のチャングムは卓越したセンスで一流の宮廷料理人となった。しかし、陰謀に巻き込まれ、済州島(チェジュド)に流罪となってしまう。失意の中でチャングムは再起を誓い、医術を学んで医女として王宮に帰ってきて、王族の主治医を務めるほど大出世を遂げていった。
このドラマは韓国で爆発的な人気を呼び、最高視聴率も57・8%を挙げて歴代時代劇で3位を達成した。
放送当時、私(康熙奉)がソウルの食堂に入っても店の女性がチャングムのドラマに夢中になりすぎて注文を取りに来てくれなかった、という思い出も残っている。それほど『宮廷女官 チャングムの誓い』は時代劇が好きな人たちから圧倒的に支持されていたのだ。
日本でもNHKで放送されて、韓国時代劇が日本に根付くきっかけになっている。まさに不朽の名作であったと言える。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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