「ハン・ヒョジュの代表作といえば?」と尋ねられたら、多くの人が『トンイ』の名前を挙げるだろう。
確かに、『トンイ』は数多い韓国時代劇の中でも特に人気が高いドラマだし、その中で明るく律儀なヒロインを演じたハン・ヒョジュの人気もとても高い。もちろん、彼女がこのドラマで好感度を飛躍的に高めたことも事実だ。
そういう意味で、『トンイ』はハン・ヒョジュにとって忘れられない代表作に違いない。
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しかし、もう一つの代表作がある。それは、彼女が女優として見事なスタートを切ることができた作品だ。そうなのだ。『春のワルツ』もまた、ハン・ヒョジュにとって絶対に欠かすことができない特別なドラマなのである。
当初、ユン・ソクホ監督は、すでに人気を得ていた女優を『春のワルツ』のヒロインとしてキャスティングしていた。撮影スケジュールも確定して海外ロケの準備に入っている段階で、その女優の出演が不可能になった。
ユン・ソクホ監督の混乱は半端ではなかった。『秋の童話』と『冬のソナタ』の大成功によって四季シリーズはドラマ界の最強コンテンツになっていた。
そのシリーズに『夏の香り』が加わり、最後に『春のワルツ』で締めくくることになっていた。いわば、ユン・ソクホ監督の抒情作品の集大成になるのが『春のワルツ』だったのである。そのクライマックスとなるドラマのヒロインが突然の降板となってしまい、ユン・ソクホ監督は途方に暮れた。
しかし、時間がない。あわてて、代役をたてなければならなかった。
あらゆる努力を重ねて、ようやくヒロインに抜擢されたのが、新人で目立った演技経験がなかったハン・ヒョジュだった。
なぜ、ユン・ソクホ監督はハン・ヒョジュを選んだのか。
彼は四季シリーズの最後は「新しい旅立ち」のドラマにしたいと考えていて、新人でキャリアがなくても将来の可能性を持った女優を選びたいと思っていた。その狙いにハン・ヒョジュはピッタリだったのだ。
こうして、『春のワルツ』はソ・ドヨンとハン・ヒョジュの若い新人コンビが主役としてドラマを彩った。
特にハン・ヒョジュは瑞々しい感性を発揮した。『春のワルツ』は視聴率で苦戦したが、素晴らしい女優を広く世に広め、多くの韓流ファンに忘れられないドラマとなった。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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