『オクニョ 運命の女(ひと)』は、韓国時代劇の巨匠と言われたイ・ビョンフン監督の作品にふさわしく、登場する人物の描き方が本当に多彩だった。
そんな登場人物の中で、ひときわ強烈な脇役だったのが、オ・ナラが演じたファン・ギョハだった。このファン・ギョハは、都で一番大きな料亭の女主人だった。
【関連】『オクニョ』と『不滅の恋人』主演女優チン・セヨンの“8つの伝説”とは?
『オクニョ』では、コ・スが演じたユン・テウォンが男性主人公になっていたが、そのテウォンを息子のように育てたのがファン・ギョハであった。
高官や両班(ヤンバン)などに顔が広かったので、そうした人脈を使ってテウォンをしっかりと支えていた。そういう意味では、ドラマの中で頼もしい人物であった。そんなファン・ギョハを、オ・ナラは堂々たる貫録で演じきっていた。
オ・ナラは、『オクニョ』に出演した後も人気ドラマに数多く出演している。『SKYキャッスル~上流階級の妻たち~』でも重要な役を演じていたが、何と言っても印象深かったのは2018年に韓国で放送された『マイ・ディア・ミスター~私のおじさん』である。
このドラマでオ・ナラが演じたのは、ジョンヒという、仲間が集まる酒場を仕切っている女性だった。美人で優しくて誰からも好かれるキャラクターだ。
しかし、彼女は耐えきれないような寂しさを抱えていた。それは、20年前に最愛の人が出家してしまって離れ離れになってしまったからだ。その傷は20年経っても癒されることはなかった。
それゆえ、賑やかな酒場が閉店となって部屋に戻ると、自然と涙があふれるような生活を続けていた。
『マイ・ディア・ミスター』というドラマには、挫折した人たちが数多く描かれていて、みんなが助け合って必死に生きていた。そうした人たちを優しく見守るジョンヒという女性は隣人愛に溢れた人であり、そんなキャラクターでオ・ナラはすばらしい演技力を見せていた。
彼女には、かつて劇団四季に在籍していたキャリアもあった。女優として多彩な活動ができる人であり、これからも多くの名作でその姿を見ることができるだろう。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
【関連】『オクニョ』と『不滅の恋人』で韓国時代劇の女王になったチン・セヨン
前へ
次へ