人気俳優ジュノが主演する韓国ドラマ『テプン商事』。1990年代後半に韓国を襲った“IMF経済危機”を時代背景にしているが、ジュノ演じる主人公カン・テプンが社長になったテプン商事が会社を構えた乙支路(ウルチロ)は、まさに韓国経済の激動を象徴する土地だった。
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1997年のアジア通貨危機、いわゆる「IMF危機」によって韓国全体が揺れ動いた時期、ドラマに登場するテプン商事が身を置く乙支路は、華やかな商店街や大企業の本社が並ぶ中心地域とは対照的に、印刷業や金属加工、工具・部品卸など小さな町工場や加工所がひしめく実務の現場であった。
昼夜を問わず機械音が響き、インクや油の匂いが立ち込め、小型トラックが路地を走り回る街。キム・ミンハ演じるオ主任がテプンの名刺を発注する場面や、ふたりの朝の出勤風景などは当時の町の雰囲気を連想させる。
当時の乙支路は、再開発の圧力と景気低迷の狭間で揺れる“過渡期の都市空間”だった。築数十年の古いビル、急な階段、薄暗い路地裏に並ぶ工具店、そして労働者向けの小さな食堂や居酒屋が灯りをともす。華やかな明洞やショッピング客で賑わう東大門のすぐ近くでありながら、乙支路は“働く街”として存在感を放っていた。
華やかな商店街や大企業の本社が並ぶ中心地域とは対照的に、印刷業や金属加工、工具・部品卸など小さな町工場や加工所がひしめく実務の現場であった。
昼夜を問わず機械音が響き、インクや油の匂いが立ち込め、小型トラックが路地を走り回る街。キム・ミンハ演じるオ主任がテプンの名刺を発注する場面や、ふたりの出退勤風景などは当時の町の雰囲気を連想させる。
そのような場所にテプン商事の物語を置くことは、当時の韓国が抱えていた現実と、そこで働く人々の夢と苦悩をより鮮明に浮かび上がらせる。
輝かしい成功の裏で、汗と油にまみれながら必死に生きる人々の息遣い。その熱と重さこそが、1990年代後半の乙支路であり、ドラマの世界に深いリアリティを与える。まさに、テプン商事の舞台としてふさわしい場所だ。
ちなみに現在の乙支路は、かつての工場街としての顔を残しながら、若いクリエイターやデザイン系の店舗、トレンディな飲食店やおしゃれなカフェ・バーが混在する“新旧融合の人気エリア”へと変貌を遂げており、地下鉄の乙支路3街駅~乙支路4街駅あたりの路地は「Hip-jiro(ヒップジロ)」という愛称で人気のホットプレイスとなっている。
(文=慎 武宏)
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