青春と挑戦のラグビードラマ『TRY~僕たちは奇跡になる~』の見どころ解説

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韓国ドラマといえば恋愛や家族ドラマを中心に数多くの名作が生まれてきたが、『TRY~僕たちは奇跡になる~』はそのなかでひときわ異彩を放つ。題材に選ばれたのは“ラグビー”。野球やサッカーに比べて韓国での知名度は高くないこの競技を軸に、若者たちの汗と情熱、そして再生の物語を描き出した作品である。

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物語の舞台は、勝利から遠ざかって久しい弱小高校ラグビー部。才能も実績も乏しいメンバーが掲げる目標は全国大会優勝という途方もなく大きな夢だ。

無謀とも思える挑戦に飛び込む姿は観客を痛快にさせる一方で、彼らが抱える葛藤や劣等感は切実であり、強い共感を呼び起こす。練習や試合の一瞬一瞬が彼らにとって奇跡へと近づくための道程となるのだ。

中心に立つのはユン・ゲサン演じるチュ・ガラム。かつて韓国ラグビー界のスターとして脚光を浴びながらも、薬物スキャンダルによって転落した過去を背負う男である。

栄光を失い居場所をなくした彼は、母校へ戻り監督として若者を導くことになる。再びラグビーと向き合う姿は単なる指導者の物語ではなく、失われた自己を取り戻そうとする人間再生のドラマでもある。

『Try~僕たちは奇跡になる~』
(写真=韓国SBS)

魂を震わせる群像劇

若き部員たちは、当初はガラムを拒絶し、反発を繰り返す。しかし彼の誠実さと熱意に触れるうち、次第に心を開き始める。反感が尊敬へと変わり、孤立していた心が一つに結びついていく過程は、青春ドラマならではの胸を打つ瞬間である。

キャプテンのユン・ソンジュン(演者キム・ヨハン)は、サッカー界で輝く弟に劣等感を抱きつつも、ラグビーにすべてを懸ける青年だ。

副キャプテンのオ・ヨングァン(演者キム・イジュン)は、公務員試験という現実的な将来を考えながらも、フィールドでは仲間を支える精神的支柱として存在感を放つ。それぞれが夢と現実のはざまで揺れながら成長していく姿は、観る者に強い共鳴を与えるだろう。

また、チュ・ガラムの元恋人で射撃部のコーチを務めるペ・イジ(演者イム・セミ)や、射撃部のエース選手ソ・ウジン(演者パク・ジョンヨン)、さらに漢陽ハニャン体育高校の校長カン・ジョンヒョ(演者キル・ヘヨン)といった登場人物たちも物語に厚みを加える。単なるスポーツ青春劇に留まらず、人間関係の複雑な絡み合いが展開を一層ドラマティックにしている。

試合のシーンでは激しい肉弾戦が迫力ある映像で描かれ、練習の苦しさやチーム内の衝突は息苦しいほどのリアリティを帯びている。しかし、その果てに訪れる和解や絆の瞬間は温かく、観る者の胸を大きく揺さぶる。涙と笑いが交錯する時間の中で、視聴者はいつしか選手たちを心から応援する自分に気づくはずだ。

ラグビーという馴染みの薄いスポーツを通じて描かれるのは、挑戦の意味、仲間と共に歩む喜び、そして倒れても再び立ち上がる人間の強さである。勝敗を超えたそのメッセージは、スポーツ経験の有無に関わらず、誰の心にも響く普遍性を持つ。

『TRY~僕たちは奇跡になる~』は、青春の苦さと輝きを余すところなく刻み込み、視聴者に「奇跡を信じる力」を呼び覚ます。熱く、爽快で、魂を震わせるこの群像劇は、スポーツを超えた“生きることのドラマ”として記憶に残るだろう。

◆『TRY~僕たちは奇跡になる~』概要

放送局:SBS(2025年)
出演者(役名):ユン・ゲサン(チュ・ガラム)、キム・ヨハン(ユン・ソンジュン)、キム・イジュン(オ・ヨングァン)、イム・セミ(ペ・イジ)、パク・ジョンヨン(ソ・ウジン)、キル・ヘヨン(カン・ジョンヒョ)
監督:チャン・ヨンソク (『復讐代行人2~模範タクシー~』など)
脚本:イム・ジナ
配信情報:Netflixにて独占配信中

文=大地 康

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