韓国ドラマで特徴的なのは、ストーリーの中に「対立」を徹底的に詰め込むことだ。恋人同士、親と子、善人と悪人、財閥と庶民……このような両者が正義や利害をめぐって対立するところにドラマ性が生まれる。しかも、両者の違いが顕著であればそれだけストーリーに変化が生まれる。そこに面白さが宿るのである。
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中でも、韓国時代劇は歴史上の悪役を十二分に活用していく。その最たる例が、権力を持った王族女性の横暴だ。たとえば朝鮮王朝では国王が未成年の場合に王族の長老女性が統治を代行することが多かった。しかも、そういうときに限って政治が乱れて数々の「負の遺産」が生じた。
そこをドラマの制作者は見逃さない。かくして、悲劇的な歴史の悪役が時代劇の重要なキャラクターとしてひんぱんに登場してくる。
象徴的なのが「悪の三大王妃」である。
1人目は文定(ムンジョン)王后だ。11代王・中宗(チュンジョン)の三番目の妻であり、自分が産んだ息子を即位させるため、中宗の先妻が産んだ12代王・仁宗(インジョン)を毒殺した。その末に息子を明宗(ミョンジョン)として即位させると、文定王后は摂政を行って賄賂政治を横行させた。
2人目は貞純(チョンスン)王后である。21代王・英祖(ヨンジョ)の二番目の妻なのだが、英祖の息子の思悼(サド)世子が米びつに閉じ込められて餓死する事件が起きたときに、貞純王后は悪質な陰謀を行っている。
さらに、思悼世子の息子だった正祖(チョンジョ)が亡くなったとき、王位を引き継いだ純祖(スンジョ)の代理で政治に関与してキリスト教徒の大虐殺事件を引き起こしている。
3人目は純元(スヌォン)王后だ。純祖の妻なのだが、実家の安東・金氏(アンドン・キムシ)の一族を政権の中枢に入れて権力を思い通りに独占した。その結果、政治がとことん腐敗してしまった。
以上の3人は、朝鮮王朝を衰退させた張本人ばかりだ。彼女たちは韓国時代劇でも極端な悪役を一手に引き受けている。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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