大河ドラマとして朝鮮王朝の建国を重厚に描いた『太宗 イ・バンウォン~龍の国~』では、主役のチュ・サンウクが演じた李芳遠(イ・バンウォン)の成長を克明に描いている。
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同時に、ドラマの序盤ではキム・ヨンチョルが扮した李成桂(イ・ソンゲ)にも大きくスポットが当たっていた。なにしろ、高麗王朝の大将軍から朝鮮王朝の初代王になる大人物だけに、物語の中心に位置しているのも当然のことなのだ。
この李成桂は、史実でも非常に興味深い英雄である。実際、生涯を通して歴史的に面白いエピソードが多く、確かに傑出した人物であることは間違いない。その中でも、とっておきのエピソードを紹介しよう。
李成桂の先祖は、かつて全州(チョンジュ)で活躍する豪族であった。それなのに、彼の生まれた場所はその地からはるか遠く離れた朝鮮半島北東部だった。その理由は、李成桂の4代前の先祖が個人的なトラブルを起こして故郷を追われたからである。
李成桂はもともと聡明な男であり、弓の名人としても知られた。ある日、彼は妻の実家を訪ねた帰り道で日が暮れてしまい、小さな寺で一夜を過ごすことになった。そのとき、李成桂は不思議な夢を見た。彼は崩れかけた建物にあった3本の立派な柱を背負っていたのである。
この謎めいた夢に心を惹かれた李成桂は、無学(ムハク)大師という高名な僧に話を聞いた。すると、無学大師は「崩れかけた家は高麗を指します。柱を3本背負ったということは、その時の姿が“王”の字に似ていたのでは……。あなたは王になる夢を見たのです」と答えた。
この将来の運命を暗示するような言葉は、やがて李成桂が王になる道を切り開く重要なきっかけとなった。
こうしたエピソードは、後に創作された可能性も否定できない。とはいえ、あまりに有名な英雄だからこそ、その業績にふさわしい話が歴史に残っているとも言える。このように秀逸なエピソードで語られる李成桂は、『太宗 イ・バンウォン~龍の国~』で主役に次ぐ重要キャラであり、彼の活躍もドラマで大いに堪能しよう。
文=大地 康
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