現代の韓国男性は、あまり髭を生やしていない。日本と比べても、髭を生やす男性は本当に少数だ。もともと、韓国の男性は遺伝的にも髭が薄いと言われている。地理的には北方から暖かい地域を求めて南下した人々が祖先の多くを占めているが、その人たちには「毛が薄い」という傾向があったと推定されている。
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そういう身体的な特徴があっても、朝鮮王朝時代の成人男子はかならず髭を生やしていた。
実際、韓国時代劇を見ていても、大人の男性は髭を持っているのが当たり前になっているし、男優たちも役を演じるときは付け髭をしている。
このように、朝鮮王朝の男たちが髭を当たり前のように生やしていたのは儒教が関係している。
というのは、朝鮮王朝が国教に指定していた儒教は最高の徳目として「孝」を挙げており、親孝行こそが絶対無二の価値観となっていた。その「孝」においては、親にもらった身体を特に大切にした。その際、「毛」も大切な人体の一部なので、親孝行を第一に考えていた朝鮮王朝の男子たちは、髭をむやみに剃ることをしなかったのである。
ましてや、国王というのは民に向かって真っ先に儒教的な価値観を示す必要があり、かならず髭を生やすようにしていた。
必然的に、時代劇で国王に扮する男優たちも髭を生やした姿でキャラクターを作っていたのである。
なお、時代劇で国王のそばに付いている官僚の中で一部は髭を生やしていないが、その人たちは去勢している宦官(かんがん)であった。この場合は内侍(ネシ)と呼ばれていた。彼らは髭が生えてこなかったので、時代劇でも髭がない姿で登場していた。
また、一部の時代劇で髭を生やしていない国王が登場するが、それはあくまでも撮影用の事情である。特に、イケメン俳優が国王を演じるときは、イメージの問題であえて髭を付けないケースもある。しかし、中年以上の俳優が国王を演じるときは、威厳を示すためにも、絶対に髭を付けているはずだ。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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