パク・シフが主演している『風と雲と雨』は、歴史好きにはたまらない時代劇だ。実際、このドラマの前半を見ていると、興宣君(フンソングン)が二男の命福(ミョンボク)を次期国王にするために必死になっている様子がよく描かれていた。
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特に、名優のチョン・グァンリョルが興宣君を重厚に演じていて、ドラマに心地よい緊迫感をもたらしている。
そんな興宣君は、貧しい王族の悲哀を骨身に感じてきた男であった。
彼は1820年に生まれていて、21代王・英祖(ヨンジョ)の玄孫に該当している。かなり由緒ある王族なのだが、両親を早く亡くしたことで苦労がたえなかった。
それでも、彼には野望があった。それは、頭脳明晰な息子を絶対に国王に即位させたいということだった。
普通なら実現不可能なのだが、わずかな救いがあった。それは、国王として在位していた哲宗(チョルチョン)に息子がいないという事実だった。
そこで、興宣君は巧妙に策を練った。当時、国王以上に権力を掌握していたのは安東・金氏(アンドン・キムシ)だったが(『風と雲と雨』では壮洞・金氏〔チャンドン・キムシ〕になっていた)、興宣君は安東・金氏に何度も土下座をして媚びを売っていた。
王族としてのプライドは表に出さなかった。むしろ、無能を装った。権力者から笑い者にされても、興宣君は意に介さなかった。王位を狙っている、と警戒されることが一番こわかった。それだけは避けたかったのだ。
『風と雲と雨』でも、チョン・グァンリョルが扮する興宣君は優柔不断で王族らしくない。しかし、彼は虎視眈々と息子の即位を狙い続けた。その執念は見事であった。
そんな興宣君も、やがて宿願を果たすと、別人のように豹変してしまう。そのあたりの変化をチョン・グァンリョルが巧みに演じていた。
前半から後半に移っていく『風と雲と雨』。協調していた興宣君とチェ・チョンジュン(パク・シフ)がやがて宿敵同士になってしまう。そのあたりの展開が本当に興味深い。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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