テレビ東京の韓流プレミアで放送されている『ヘチ 王座への道』(全24話)は第20話になって大事件が勃発する。それは、大規模な反乱が起きたのだ。首謀者はコ・ジュウォンが演じているイ・インジャ(李麟佐)であった。
チョン・イルが演じる英祖(ヨンジョ)はまだ即位したばかりだった。それなのに、彼の王位を危うくする反乱が起きて、王宮が極度に緊張するのだが、ドラマで描かれた反乱は実際の歴史ではどのように起こったのだろうか。史実を照らし合わせてみよう。
英祖が即位してから、先王の景宗(キョンジョン)を支持していた少論派の一部勢力は、すでに衰退していた南人派の過激分子と結託して、政権の転覆をはかった。
その際に、英祖が景宗を毒殺したという噂を広めて、広く民心を得ようとした。さらに、王族のミルプングン(密豊君)を新しい国王に推挙することで、反乱を正当化させようとした。その際に中心的に動いたのがイ・インジャであった(このように、『ヘチ 王座への道』で極端に悪役になっているミルプングンは実在の人物であり、王族としてイ・インジャに利用される存在であった)。
イ・インジャが反乱を勃発させたのは1728年であり、彼は最初に清州(チョンジュ)の城を徹底的に攻めた。
清州は都から東南側に130キロ離れた都市だが、なぜイ・インジャが清州から反乱を始めたかというと、この土地をよく知っていて、知り合いも多かったからだ。つまり、一番攻めやすいところから反乱をスタートさせたと言える。
もくろみどおり、イ・インジャは清州城を攻め落とし、反乱軍は勢いを増した。調子に乗ったイ・インジャは自らを「大元帥」と称し、「景宗様の復讐のための闘い」であることを強調した。このように、景宗の弔い合戦であることを大義名分にして、わざわざ景宗の位牌を用意してひたすら拝み続けていた。
さらに、「義は我らにある」と檄を飛ばし、同志を増やした。
そういう意味では、イ・インジャという男は人心を掌握するのが巧みだった。反乱が成功した際の褒美を高らかに掲げて、貧困にあえいでいた人たちもうまく兵力に吸収していった。
そうやって勢いを得たイ・インジャはついに都への進軍を開始した。
果たして、その結果はどうだったのか。
『ヘチ 王座への道』のストーリー進行に則して、「イ・インジャの乱」の成り行きについて改めて解説していきたい。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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