時代劇『ヘチ 王座への道』も終盤になると、チョン・イルが演じるヨニングンが英祖(ヨンジョ)として即位して、民のための政治に邁進していく。
そうした中で立場が変わったのが、コ・アラが扮しているヨジであった。
彼女はもともと、司憲府(サホンブ/不正や犯罪を正していく役所)の茶母(タモ)として活動していた。この場合の茶母というのは、女性が担う捜査官を意味していて、ヨジも様々な事件において男性顔負けの活躍をしていた。
【写真】『ヘチ』ヨジ役をもっと知りたい!! コ・アラは今、何をしているのか
そんなヨジは、英祖が即位してから王宮の女官を続けていた。そのことが英祖は心配だった。ヨジに対しても「平凡な生活が送れなくなる」と忠告していた。
なぜ、英祖はそこまでヨジの女官生活を不安に思ったのか。
それは、王宮で奉職する女官の身分をよく知っていたからだ。
果たして、どういうことなのか。
わかりやすく言えば、すべての女官は国王と結婚したと見なされる。それゆえ、他の男性と結婚することは許されないのだ。つまり、王宮では女官でいるかぎり一生独身を守らなければならない。
それだけではない。
男性との恋愛もご法度だ。それは、国王に不義を働くことになるからだ。よって、王宮の中では男性と気軽に会話をすることも許されない。恋愛を疑われる行為は絶対にしてはいけないのだ。
しかし、男女の仲は禁止すればするほど愛情が燃え上がるケースがある。仮に女官が妊娠した場合は、該当する男女は死罪となり、生まれた子供は奴婢にさせられる。それだけに、覚悟がないと王宮の中で男女が交わることができなかったのである。
その他にも、女官になると自由は一切ない。常に窮屈な規則に縛られて生きなければならない。しかも、病気になったら容赦なく王宮から出されてしまうのだ。
そうした女官の境遇を知っていたから、英祖はヨジが女官になるのを反対した。しかし、ヨジは「王様をお守りしたいのです」という一心で女官になる決意を固めた。
ヨジは間違いなく英祖にとって最高の女官であったに違いない。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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