『オクニョ 運命の女（ひと）』には、悪人がたくさん出てきたが、その中でも特にえげつなかったのが尹元衡（ユン・ウォニョン）であった。演じていたのはチョン・ジュノで、主役として華々しい活躍をしてきた彼が、『オクニョ 運命の女（ひと）』では憎たらしいほどの悪役を再現していた。
視聴者は「チョン・ジュノのようなハンサムな俳優が演じた尹元衡はそんなに性格が悪かったのか」と思ったかもしれないが、史実を見ると、尹元衡は正真正銘のワルだった。朝鮮王朝の歴史を見ても、尹元衡ほど露骨な悪行を重ねた男は滅多にいないほどだった。
それでは、実際にどれほどワルだったのか。
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特に強調すべき能力がなかった尹元衡が出世の糸口をつかんだのは、実姉が11代王・中宗（チュンジョン）の三番目の王妃になったからだ。それが文定(ムンジョン)王后だ。
この文定王后の引き立てによって要職につくようになった尹元衡は、自分の職権を悪用して自分に歯向かう高官たちを次々に粛清した。それも、事実と違う捏造をたくさん作りだして気に入らないライバルを死に追いやった。
そして、妾にした鄭蘭貞（チョン・ナンジョン）と結託した尹元衡は、妻を毒殺して鄭蘭貞と再婚し、さらに夫婦で悪事に手を染めた。
極端なのが賄賂政治だ。文定王后が産んだ明宗(ミョンジョン)が即位してから権力を独占するようになった尹元衡は、賄賂と暴利行為で巨万の富を築いた。なにしろ、都で豪邸を15棟も連ねるほどだったという。これほど儲けた官僚は彼以外に朝鮮王朝でいなかったと言われるのも無理はない。
それでも、他人の田畑をさらに奪い続けて、富を増やした。
しかし、どんな悪事にも終わりがくる。
尹元衡の夫婦は1565年に文定王后が世を去ると、途端に没落し、田舎に逃げた。今までの悪行が知れ渡っていたので、仕返しされるのを恐れたのだ。
しかし、逃げられないと覚悟し、結局は2人とも自害した。姉の威光で大出世した尹元衡は、肝心な姉がいなくなって自分も生きる道をなくしたのだ。本当に哀れな最期だった。
文＝康 熙奉（カン・ヒボン）
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