朝鮮王朝では518年間に国王は27人いたが、その正妻となる王妃は42人いた。
こうした王妃の中には、文定(ムンジョン)王后のように典型的な悪女もいたし、端敬(タンギョン)王后のようにわずか7日間で廃妃(ペビ)になるという悲劇的な王妃もいた。
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本当に様々な王妃がいたわけだが、その42人の中で一番徳が高くて慕われた王妃は誰だろうか。
すぐに思い浮かぶのが仁顕(イニョン)王后である。
彼女は19代王・粛宗(スクチョン)の二番目の正妻だが、「朝鮮王朝実録」の記述を見ても人格的に優れていることがよくわかる。
悪女として有名な張禧嬪(チャン・ヒビン)に対しても、彼女が粛宗に愛されているという理由で仁顕王后は優しく接していた。
このように、品格がある態度というのはなかなかできるものではない。よほど優しい性格であったと思われる。
そんな仁顕王后であったが、粛宗の政治をめぐる争いの中で降格されてしまったのはあまりに不運であった。
それは、彼女が子供を産むことができず、張禧嬪が粛宗の長男を産んだことによって起こった出来事だった。
仁顕王后は廃妃になって実家に戻された後も「自分は罪人ですから」という理由で粗末な生活を続けて、反省すら示していた。その一方で、側室から王妃に昇格した張禧嬪は贅沢三昧の生活に明け暮れた。
こうした2人の対応を見比べたうえで、仁顕王后は聖女としてあがめられ、張禧嬪は悪女として評判を落としたのである。
しかし、仁顕王后には悲劇の後には喜ぶべき瞬間がやってくる。1694年に張禧嬪は王妃から側室に降格し、廃妃となっていた仁顕王后が再び王妃に戻ってきたのである。そのときの庶民の喜びはすごかったと歴史に記されている。
ドラマ『トンイ』でも、女優のパク・ハソンが美しく演じた仁顕王后が、粛宗のもとに帰ってくる場面はすばらしいシーンになっていた。
朝鮮王朝の42人の王妃の中で、人格があって庶民から本当に慕われた王妃といえば、やはり仁顕王后が一番であったことだろう。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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