韓国はもちろん、日本でも放映され、何度も再放送されている韓国時代劇ドラマ『トンイ』。最近もテレビ東京系列の韓流プレミアで再放送されたが、ハン・ヒョジュが演じた主人公トンイは、実在の人物である。ただ、ドラマは脚色が盛り込まれている。
例えば名前。史実では淑嬪崔氏の名で記録されているが、本名は不明。トンイとは実はイ・ビョンフン監督がつけた架空の名前なのだ。
また、劇中では宮中の音楽や舞踊を担当する掌楽院(チャンアゴン)で下働きしているが、そんな記録も残っていない。残されている記録によると、淑嬪崔氏は7歳で宮中の炊事や洗濯などの下働きをするムスリになったという。
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残されている記録によれば、仁顕王后(イニョンワンフ)が廃妃となり、張禧嬪(チャンヒ ビン)が王妃になった頃、仁顕王后のために祈り続けていた過程で、粛宗の目にとまり、1693年に側室のひとつである淑媛(スクヨン)に冊封されたという淑嬪崔氏。
その年の10月には粛宗の子である王子を出産するが、わずか2カ月後に亡くなってしまう。
ただ、1694年に張禧嬪が王妃から嬪に降格し、仁顕王后が復位すと、その年の9月に淑嬪崔氏は王子・昑(クム)を出産。この昑がのちに朝鮮王朝・第21代王の英祖(ヨンジョ)となるわけだ。
このように淑嬪崔氏については歴史書にもあまり詳しく記されていないが、一説によれば性格が温厚で思慮深く、謙虚だったという。
礼節を重んじ、人を配慮する心も持ち合わせていたとされており、まさにドラマの『トンイ』のイメージそのものだ。そんな淑嬪崔氏について、ハン・ヒョジュンはどんな印象を持ち、何を意識して演じたのだろうか。
2012年6月に行なったハン・ヒョジュとのインタビューにその答えがある。
―淑嬪崔氏という実在の人物を演じるにあたって、もっとも神経を使った部分はどこですか?
「こう言ったら誤解を招くかもしれませんが、淑嬪崔氏を演じるにあたっていちばん神経を使った部分は、“いかに神経を使わないようするか”ということでした。
というのも、イ・ビョンフン監督はキャラクターの型にはまる必要はないし、昔の人間の気持ちに無理にならなくてもいいというふうに、常々、私に言っていたからです。
“トンイのポジティブさや、内面の強さといった部分はすでに君の中にある。それがちゃんと画面に伝わるように努力しなさい”というのがイ・ビョンフン監督の指導でした。
それで、自分の本来の姿でいられるように、自分以外の人間になろうという神経を使わないようにしました。それが一番大変だったと思います」
―ハン・ヒョジュさんは、トンイについてどういう人物だと思いますか?役を追求する過程で感じたことを教えてください。
「どうして、あんなにポジティブにいられるのだろう…そういう疑問がありました。実際に、台本を見ると、“どうしてこんなこと我慢できるの!”とか“こんなにポジティブなのはありえない!”、“私だったら諦めちゃうなぁ”と思う部分も多かったです。
だけど、その一方で考えてみると、トンイという人物を通じて、視聴者のみなさんがポジティブな気持ちになれるということも疑いようのない真実に思えました。
また、あの明るさというのは、生まれ持ったものというより、困難を乗り越えてきたからこそ、備わったものなんだなと感じました。そのたびに自分の気持ちを強く持って、演技にしっかりとうちこまなければならないと思わされましたね」
文=慎 武宏
*このインタビュー原稿は2012年6月に行なわれたものを、大幅に加筆・修正したものです。
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