Netflixで配信中の韓国ドラマ『ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語』。大企業に長く務めるも役員昇進を目前に左遷され、最終的には希望退職して第2の人生を踏み出すキム・ナクス部長の姿が切なく描かれている。
このキム部長を演じるリュ・スンリョン以上に、視聴者たちの好評を得ているのがキム部長の妻パク・ハジンを演じている女優ミョン・セビンだ。
「ミョン・セビンが『キム部長の物語』で描くこの時代を生きる妻たちの肖像」(『JTBCニュース』)、「ミョン・セビン、『キム部長』で“K-妻”の真の姿を描く…現実味あふれる演技に“共感100倍”」(『朝鮮日報』)など賛辞が絶えない。
1975年4月生まれのミョン・セビン。1996年、歌手シン・スンフンのミュージックビデオ出演をきっかけに芸能界デビューし、1998年のドラマ『純粋』で“初恋のアイコン(象徴)”として広く注目を集めた。
そんな彼女が実年齢でも50歳を迎えた今年、大企業の部長となるまで夫キム・ナクスを献身的に支えてきた専業主婦パク・ハジン役を演じ、家族のために自らを犠牲にする韓国の専業主婦たちの現実を生々しく代言しているのだ。
昇進の行方が不透明になった夫、老後が見えない現実を前に一念発起する姿は、今を生きる多くの主婦たちの悩みをそのまま写し取ったかのようである。宅地建物取引士試験に挑戦し、自ら老後の準備に乗り出す姿もたくましい。
特に、夫と息子の橋渡し役として力を発揮し、仕事で疲れて帰ってきた夫を気遣いながらも、「私たちの結婚生活、今からシーズン2よ」と発破をかけるシーンは熟年夫婦たちへのエールとなった。
またパク・ハジンの若い頃を演じる場面ではチャーミングな笑顔で“初恋アイコン”として広く注目を集めた当時を思い起こさせた。
何よりも感動的だったのは希望退職をして帰宅したナクスを迎えたシーンだ。
夫の苦労を誰よりも理解している妻として、「お疲れさま、キム部長」と慰めの言葉と温かな抱擁は、多くの視聴者の目頭までも熱くさせた。未来への不安、やり遂げた達成感、家族への申し訳なさなど、複雑な感情が入り混じったまま涙を流すキム・ナクスの姿も、胸を打つものがあった。
いずれにしても、すべてはミョン・セビンの生活感ある演技による賜物。彼女の存在が作品をより豊かにしている。キム部長一家の中心軸を守る妻パク・ハジンの奮闘=ミョン・セビンの熱演にもぜひ拍手を送りたい。
(文=慎 武宏)
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