『ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語』は、韓国社会の“人並み”という言葉の重さを静かに描く群像ドラマである。
就職も昇進も時期を逃してはいけず、家や車、服まで水準に合わせなければならない現代のソウル。誰もが息を詰めながら「僕、ちゃんと成功してるよね?」「僕、幸せなんだよね?」と問いかける。その象徴が主人公キム・ナクス(演者リュ・スンリョン)である。
【関連】『医師チャ・ジョンスク』のミョン・セビン!幅広い演技が持ち味の女優
大企業の部長職、立派な家、理解ある妻、自慢の息子、完璧に見える人生。しかし、彼の“成功”を支えてきたものが次第に崩れ始めるとき、家族の静かな均衡もまた音を立てて揺らいでいく。
そのとき物語のもう1つの軸となるのが、妻パク・ハジン(演者ミョン・セビン)である。彼女は長く「キム部長の妻」として、夫を信じ、家庭を守ってきた。
与えられた安定の中で感謝を忘れず、控えめに生きてきた女性。しかし時代は変わり、会社での夫の地位が揺らぎ、老後の不安が忍び寄る。
“ほどほどに生きるには、もうほどほどでは生きられない”現実の中で、彼女はこれからは自分を信じて生きる決意する。夫に寄り添う存在から、1人の人間として立ち上がる女性へ。パク・ハジンの変化は、静かな革命である。
そんなパク・ハジンに扮するミョン・セビンは、言葉よりも表情で語る女優だ。声を荒げず、涙を誇張せず、表情の陰影だけで人生の痛みと誇りを伝える。
『帝王の娘スベクヒャン』でスベクヒャン(演者ソ・ヒョンジン)とソルヒ(演者ソウ)の母親のチェ・ファを演じ、『キルミー・ヒールミー』でチャ・ドヒョン(演者チソン)の戸籍上の母親ミン・ソヨンに扮した。
さらに、『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』で左議政(チャイジョン)イ・イチョム(演者イ・ジェヨン)の妹ヘイン堂イ氏を演じた。
ミョン・セビンは、『ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語』でパク・ハジンという女性を通して、ミョン・セビンは再び“沈黙の力”を証明するだろう。
誰かの妻ではなく、1人の人間として生きる姿を描くことで、彼女は静かに、しかし確かに、観る者の心を揺さぶる。声を張らずとも、彼女の演技は時代を語るのである。
♢ミョン・セビン プロフィール
生年月日:1975年4月10日生まれ
身長:168cm
星座:おひつじ座
学歴:同徳女子大学衣装学科
デビュー:1996年シン・スンフンMV『僕なりの愛し方』
☆主な出演作
『純粋』(1998年、ドラマ)
『折鶴 Crystal Love』(1998年~1999年、ドラマ)
『ゴースト~永遠の愛~』(1999年、ドラマ)
『華麗なる復讐』(2000年、ドラマ)
『太陽に向かって』(2003年、ドラマ)
『結婚したい女』(2004年、ドラマ)
『ウェディング』(2005年、ドラマ)
『宮S-Secret Prince-』(2007年、ドラマ)
『三姉妹』(2010年、ドラマ)
『マイ・ラブリー・ブラザーズ』(2012年~2013年、ドラマ)
『帝王の娘スベクヒャン』(2013年~2014年、ドラマ)
『キルミー:ヒールミー』(2015年、ドラマ)
『漆黒の四重奏〈カルテット〉』(2016年~2017年、ドラマ)
『ポッサム~愛と運命を盗んだ男~』(2021年、ドラマ)
『医師チャ・ジョンスク』(2023年、ドラマ)
『世子(セジャ)が消えた日』(2024年、ドラマ)
『ソウルの家から大企業に通うキム部長の物語』(2025年、ドラマ)
文=大地 康
■【写真】チョン・イル、サンティアゴ巡礼中に「大声で泣いた」エピソードを披露
前へ
次へ