1960年に生まれたチョン・ホジンの父は、韓国プロレス界にその名を刻んだ伝説の男チョン・ギュドク。その血を受け継いだ彼は、1983年に芸能界へ進んだ。以来、40年以上にわたり、変わらぬ存在感を放ち続けてきた。
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『トンイ』では、幼いトンイ(演者キム・ユジョン)の父親チェ・ヒョウォンに扮していた。彼は賎民の地下組織「剣契(コムゲ)」の首領である。“国民の父”と称されるチョン・ホジンは、家族を思い続ける温かい父親の役が多い。まさに、『トンイ』もそうだった。
以後もチョン・ホジンの活躍は続いた。
2017年の『黄金の私の人生』で演じたソ・テスは、家族を思い続ける父親。繊細な感情の機微を丁寧にすくい上げ、葛藤と愛情が交錯する家庭の姿をリアルに描き出した。
2020年の『一度行ってきました』では、小児科医ソン・ナヒ(演者イ・ミンジョン)の父ソン・ヨンダルを演じた。複雑に絡み合う家族の絆を、温かな眼差しで見守るその姿は、現代の父親像を瑞々しく描き出していた。
さらに、チョン・ホジンはサスペンスドラマ『怪物』(2021年)でマニャン派出所の所長ナム・サンベに扮した。キャラクターの奥底にある孤独や誇りを繊細に表現し、緊張感と人間味を同時に伝えた。
時代劇『朝鮮弁護士』では、VIXXのエンが演じたユ・ジソンの父ユ・ジェセとして登場。チョン・ホジンが演じた姿は、歴史の重みをそのまま体現しているかのようだった。
また、『君は天国でも美しい』(2025年)では、天国支援センター長と閻魔大王という異なる二役を演じ分けた。
最新作『優しい男の物語』では、ヤクザの家系に生まれた主人公パク・ソクチョル(演者イ・ドンウク)の父パク・シルゴンを演じている。かつて名を知られた大物ヤクザ。今は隠居しているが、一度争いが起きると、その場を制する冷静さと威厳を持ち合わせている。
このように、チョン・ホジンは、人生の深淵を覗き見るような役柄を通して、多くの人々の心に強い印象を残してきた。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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