韓国tvNドラマ『瑞草洞〈ソチョドン〉』は、弁護士を題材にした作品の中でも異色の存在である。法廷での劇的な逆転劇や派手な演出に頼ることなく、ソウル・瑞草洞に実在する法曹街を舞台に、若手弁護士たちの葛藤と成長を丹念に描いている。
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物語の中心にいるのは、法務法人に勤めるアソシエイト弁護士アン・ジュヒョン。冷静沈着な外面とは裏腹に、内には熱い情熱と正義感を秘めた人物であり、彼の視点を通じて法の現場の厳しさと人間模様が重層的に描かれていく。
ジュヒョンを演じるのは俳優イ・ジョンソク。彼は『検事プリンセス』でハン・ジョンス演じるユン・セジョンの捜査官で係長のイ・ウヒョンを演じて俳優としてデビューした。
以後、『君の声が聞こえる』で超能力少年パク・スハ、『ピノキオ』でYGN報道局社会部記者チェ・ダルポ、『あなたが眠っている間に』で漢江地検刑事3部検事チョン・ジェチャンに扮してきた。
そんなイ・ジョンソクが、『瑞草洞〈ソチョドン〉』では、そうした過去の実績を基盤にしながら、より深みのある静の演技に挑戦。派手さはなくとも、目の動きや言葉の抑揚といった細部でキャラクターの感情を繊細に伝えており、彼の成熟した演技力が際立っている。
ドラマには、ジュヒョンを取り巻く若手弁護士たちも多彩に登場する。性格も価値観も異なる彼らが、それぞれ仕事と人生の間で揺れながらも、互いに影響を与え合う姿が描かれ、群像劇としての厚みを与えている。
また、ジュヒョンと新人弁護士カン・ヒジとの間に芽生える淡いロマンスも見逃せない。恋愛感情とは一線を画した繊細な距離感が、物語にほどよい温度と緊張をもたらしている。
『瑞草洞〈ソチョドン〉』は、職業ドラマの枠にとどまらず、人として何を信じ、どう生きるかを問う作品である。イ・ジョンソクの静かな演技が、その問いに静かに寄り添いながら、観る者の胸に深く染み入る。
なお『瑞草洞〈ソチョドン〉』は、日本でU-NEXTで独占配信されている。
文=大地 康
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