Netflixで配信中の韓国ドラマ『イカゲーム』シーズン3は、「極限状況下での人間性」というシリーズの根幹テーマを、より深く掘り下げた衝撃的な展開で幕を開けた。
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舞台は前作同様、社会の底辺に追いやられた者たちが命と引き換えに巨額の報酬を狙う謎のデスゲーム。子どもの遊びを模した単純なルールの裏には、冷酷な死の罠が仕組まれており、観る者に強烈な緊張を強いる。
主人公ギフン(演者イ・ジョンジェ)は、かつてゲームを生き延びた過去を持ちながら、再び命懸けの戦場へと身を投じたが、今回は単なる生存者としてではなく、ゲームの根幹に挑む“挑戦者”として臨む。
彼の目的は、理不尽なシステムを自らの手で終わらせること。しかし仲間が次々と命を落とす現実に直面し、彼は自分の信念さえ見失いかける。その葛藤の中、意外な人物の登場がギフンに再び立ち上がるきっかけとなる。この新たな参加者は、唯一の希望であると同時に、新たな分断の火種でもある。
シーズン3の見どころは、個性豊かな参加者たちの心理戦にもある。
冷静沈着なイ・ミョンギ(演者イム・シワン)、計算高く理知的なカン・デホ(演者カン・ハヌル)、感情を隠しつつ鋭く立ち回るヒョンジュ(演者パク・ソンフン)らが、それぞれの信念と葛藤を抱えてゲームに挑む。
彼らの表情1つ1つが、その裏に隠された過去や欲望を物語る。また、パク・ヨンシク(演者ヤン・ドングン)やチャン・グムジャ(演者カン・エシム)ら脇を固める俳優陣の演技も重厚で、作品世界をより立体的にしている。
ゲームの残酷さに拍車をかけるのが、観戦する謎の仮面VIPたちの存在だ。英語で交わされる彼らの芝居がかった会話は、どこか現実味を欠くが、その白々しさこそが、命を賭けたプレイヤーたちとの対比を際立たせる仕掛けとも受け取れる。
場違いな華美な美術セットと、無情な殺し合いが織りなすコントラストは、視覚的にも感情的にも観る者を圧倒する。
さらに今シーズンでは、極悪非道な幹部ファン・イノの過去が明かされ、人間の業と欲望の深さをまざまざと突きつける。最弱と目された者が最後まで生き残る展開など、予測不能なストーリーは緊張の糸を切らせない。
シリーズ完結編とも言えるこのシーズン3は、単なる続編にとどまらず、人間とは何かという問いを正面から突きつけてくる重厚な作品に仕上がっている。倫理と欲望の狭間で、誰が信念を貫き、誰が生き延びるのか。結末まで目を離せない傑作である。
文=大地 康
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