Netflix『広場』で描かれる復讐のノワール、ホ・ジュノが魅せる沈黙と威圧の演技力

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韓国ノワール作品の新たな旗手として注目を集めるNetflixシリーズ『広場』。物語は、かつて裏社会で名を馳せながらも自ら足を断ち、闇の世界から姿を消したナム・ギジュンが、11年の沈黙を破って再び表舞台に戻ってくるところから始まる。

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彼の復帰のきっかけは、弟のナム・ギソクの非業の死。組織内でナンバー2として重責を担っていた弟が殺されたことを知ったキジュンは、怒りと哀しみを胸に、背後に潜む真の敵をあぶり出そうと動き出す。復讐と正義が交錯する重厚なアクションドラマである。

ギジュンを演じるのは、長年にわたり韓国ドラマ界で安定した演技力を誇ってきた俳優ソ・ジソブ。冷徹さと内に秘めた激情を併せ持つ主人公像を、彼特有の静かな存在感で表現している。

そして物語の中核を担うのが、“ジュウン”という名の犯罪組織。その頂点に立つのが、冷徹で圧倒的な支配力を誇るイ・ジュウンである。このキャラクターを演じているのが、ベテラン俳優のホ・ジュノである。

ホ・ジュノといえば、その名を聞いただけで威厳と迫力を思い浮かべる視聴者も多いだろう。現代劇を中心に多くの名作に出演してきた彼は、『若者のひなた』や『ホテリアー』など、時代を映すドラマで独自の存在感を放ってきた。

『広場』のホ・ジュノ
(写真=Netflix)

ホ・ジュノの新たな一面を示す作品

映画界にも足跡を残しており、『ドラゴン・スクワッド』などで多面的な演技を披露している。

そのホ・ジュノが本格的な時代劇に挑んだ代表作のひとつが、2006年から放送された『朱蒙(チュモン)』である。

高句麗建国の伝説を描いたこの大河ドラマで彼が演じたのは、主人公朱蒙の父・ヘモス。国を陰から支えた英雄であり、時代に翻弄された男の悲哀を静かに、だが力強く演じ切った。

さらに記憶に新しいのが、『仮面の王 イ・ソン』でのテモク役だ。これは朝鮮王朝の仮面をテーマにしたサスペンス時代劇で、ホ・ジュノは秘密組織・辺首会(ピョンスカイ)の首長を見事に演じ切った。

『広場』において彼が演じるイ・ジュウンは、善悪の境界が曖昧な現代の権力者という複雑な役どころである。裏社会の頂点に立ちながらも、その内面にはどこか虚無的な影を落とすこの人物像を、ホ・ジュノは静かに、しかし確かな重みをもって表現している。

彼の演技には、一瞬の目線や沈黙にすら物語を感じさせる深みがある。時代劇と現代劇、ヒーローとヴィラン、そのいずれにも染まりきることなく、絶妙なバランスで“役を生きる”俳優。それがホ・ジュノという存在である。

そして『広場』は、そんな彼のキャリアの新たな一面を示す作品となるだろう。血と裏切りが渦巻くノワールの世界で、ホ・ジュノがどのように己の存在を刻むのか。今後の展開に期待が高まる。

文=大地 康

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