韓国ドラマ界で「日本語がうますぎる」韓国人俳優がいる。
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現在Netflixで配信中のドラマ『隠し味にはロマンス』は、料理をテーマにコ・ミンシとカン・ハヌルが織りなすロマンスを描いた作品だ。恋愛模様だけでなく、経営やマーケティングといったビジネス要素も盛り込まれ、見ごたえのある内容となっている。
物語の後半では舞台が韓国・全州から日本・北海道へ移り、札幌の二条市場や居酒屋、日本料理店などが登場。日本人にとっても親しみやすい風景が描かれる中、劇中でとりわけ存在感を放っているのが、コ・ミンシ演じる主人公の師匠・タツオだ。
このタツオを演じているのが俳優キム・イヌ。料理に一切妥協を許さない厳格な料理人という役どころで、回想シーンにも多く登場し、セリフも多い。その中で視聴者の耳を引いたのが、彼の“あまりにも流暢な日本語”だった。
韓国人にとって難しいとされる「つ」の発音も極めて自然で、全体的に滑らかな日本語を話す姿は、多くの視聴者に驚きを与えているだろう。
実はキム・イヌは、宮城県生まれの在日3世。1969年2月生まれの彼は、16歳で俳優になることを決意し、18歳で高校を中退して上京。当時は「田村仁人(たむらひろと)」という芸名で、日本で俳優活動をしていた。2008年に韓国に渡るまでに、約20本の映画と40本以上の舞台に出演しており、すでにベテランの域に達していた。
しかし韓国に渡る直前、彼の生活は荒れに荒れていたという。酒に溺れ、健康を失い、人間関係も崩壊。金銭的にも困窮し、カード会社から借金をして生活していたほどだ。そんな彼を救ったのが、2本の韓国映画だった。それが『パイラン』(2001)と『おばあちゃんの家』(2002)。この2作品を観て、前が見えなくなるほど泣いたと語っている。
インタビューでは、「韓国に行くかどうか、3年間悩みました。40歳が目前で、すべてを捨てて挑戦するのが怖かった。でも、韓国語は私にとって外国語である一方で、学びたいという強い思いが挑戦の原動力になってくれた。一度きりの人生だし、とにかく行こうと決めて荷物をまとめました」と語っている。
その後、慶熙(キョンヒ)大学の韓国語学院で韓国語を学び、映画『グッドモーニング・プレジデント』で韓国俳優としてデビュー。その後は日韓の歴史を描いた『暗殺』『お嬢さん』『金子文子と朴烈』『軍艦島』『工作 黒金星と呼ばれた男』などに出演し、存在感を発揮した。
なかでも、2018年に放送されたドラマ『ミスター・サンシャイン』では「伊藤博文」役を熱演。多くの視聴者に強い印象を残した。
勢いだけで韓国へ渡りながらも、多くの話題作に出演してきたキム・イヌ。NetflixをはじめとするOTTサービスを通じて韓国ドラマが日本でも身近な存在となった今、今回の『隠し味にはロマンス』をきっかけに、さらに多くの作品での活躍が期待される俳優だ。
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