危機を迎えた韓国ドラマの「新たな現象」とは?産業全体の悪循環はいつまで続くか

2024年03月10日 話題
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世界の人々の心を鷲掴みにし、地球規模でヒット作を連発している韓国ドラマ。

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ところが先日、韓国ドラマ制作会社協会は「ドラマ産業の危機と解決方法」について話し合う懇談会を開き、主要ドラマ制作会社やテレビ局の関係者たちを呼び集めた。

懇談会で挙げられた主な議題は、一部の主演級俳優たちの出演料が手に負えないほど高騰した件について。このままだとドラマ業界全体が共倒れになりかねないという話だ。

世界的にヒットしたNetflixオリジナルシリーズ『イカゲーム』の主演俳優イ・ジョンジェは、2024年配信予定のシーズン2では1話あたり10億ウォン(約1億円)の出演料をもらったという。全6話の予定なので、合計60億ウォン(約6億円)だ。

2023年末に韓国国会で公開された俳優の賃金報告書によると、主演級俳優たちのギャラの相場は1話あたり3200万ウォン(約320万円)から2億ウォン(約2000万円)。

『イカゲーム』がいくら世界的メガヒットを飛ばしたとはいえ、10億ウォンはとんでもない高額と言わざるを得ない。

『イカゲーム』シーズン2
『イカゲーム』シーズン2(画像=Netflix)

そもそも俳優の出演料が1億ウォン(約1000万円)を超えるようになったのも、ここ2、3年の話だ。

その変化をもたらしたのが、動画コンテンツ業界の“黒船”Netflix。

コンテンツづくりにおいて出演料と制作費に上限を設けない戦略をとるNetflixの進出以来、1話あたり8億ウォン(約8000万円)ほどだった韓国ドラマの制作費は3倍以上に跳ね上がり、俳優たちはNetflixでもらった出演料をそのままテレビ放送ドラマでも要求するようになったという。

懇談会に出席したテレビ局の関係者は、「テレビ局で編成されるドラマの本数が減ったなか、制作会社はそれでも編成されやすいトップスターを起用し、彼らの要求に合わせて数億ウォンの出演料を支払ってでもドラマを制作するしかない立場だ。それがまた制作費の高騰を招くという悪循環になっている」と話す。

とある制作会社の関係者も、「先日、俳優たちのキャスティングを行った時、1話あたりのギャラとして4億ウォン(約4000万円)、7億ウォン(約7000万円)と提示された。最近はNetflixなどグローバルOTT(コンテンツ配信サービス)の出演料が基準になっていて難しさがある。実際はメディアで報じられる金額よりずっと多くのギャラを支払う」と吐露した。

テッド・サランドスNetflix共同CEO(写真=Netflix)

また、一部の俳優は高額な出演料に加えて、作品の売上10%の報酬を出演の条件に挙げたり、自分の所属事務所を共同制作会社として加え一定の収益を得る場合もあるという。

俳優の出演料もさることながら、2018年の韓国版働き方改革によってドラマの制作現場でも週52時間勤務制が導入され、スタッフの人件費も上昇するなど、制作費は上がる一方だ。

そのため制作会社は高い制作費を負担してくれるNetflixなどOTTにすがり、制作会社やテレビ局の力は萎縮するという、ドラマ産業全体の悪循環が続いている。

韓国ドラマには新たな現象も起きている。

制作費の大半が主演級俳優たちにあてられるため、メイン主人公の相手役は比較的無名の俳優や新人が務めるのだ。また、主演級の1~2人を除く他の俳優たちは本来のギャラの50~70%ほどしかもらえず、登場人物の数もぐんと減って韓国ドラマのお約束でもあった“主人公の親友”がいない作品もある。

数百人が力を合わせて、ひとつ作品を制作しているにもかかわらず、ドラマがヒットしても収益のほとんどが主演級俳優に流れることも珍しくない。

そのため、懇談会に出席した関係者たちは中国のように俳優の出演料が制作費の一定以上を超えないようにしたり、ヒットや海外への販売に貢献したことに対するインセンティブを支払ったり、話数単位ではなく撮影日数や時間をもとに出演料を支払うなど、もっと合理的で持続可能なガイドラインを策定する必要があると声を揃えた。

2024年、現時点で制作が決まった韓国ドラマは約30本。2022年の160本、2023年の80本に比べて激減している。このような市場縮小は2025年まで続く見込みだ。急成長からの危機を迎えた韓国ドラマは、下降スパイラルから抜け出せるだろうか。

文=李 ハナ

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