チョン・イルは現代劇でも時代劇でも最高の演技を見せるオールマイティ系の俳優だ。その中でも、時代劇なら王族から盗っ人まで幅広いキャラクターをこなしてきたが、『ヘチ 王座への道』で扮したヨニングン(延礽君)もとても魅力的な主人公であった。
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このヨニングンは後に英祖(ヨンジョ)として即位することになるのだが、決して順風満帆な人生を歩んだ人ではなかった。むしろ、苦労がとても多かったのだ。それは、ヨニングンが王族の血を引きながらも、母の低い身分が理由で周囲から軽視されていたからだ。
実際、彼は粛宗(スクチョン)の正統的な息子であったのだが、まるで王位継承の資格さえ持たないかのような扱いを受けていた。これは、明らかに不当なことであった。確かに、異母兄の長男が世子となるのは自然なことだったが、能力的にヨニングンの優秀さは父である粛宗も認めるところであった。
しかし、ただの官僚たちでさえ、ヨニングンに対して冷たい目を向けていた。このような背景が物語の序盤から際立っており、チョン・イルはヨニングンを演じるときにしばしば悲哀に満ちた表情を見せた。それにもかかわらず、ヨニングンは強い信念を持ち、王族としての役割を果たそうと努めた。
特に、科挙の試験で老論派が不正を働いていた事実を暴くことは、彼にとっての挑戦であり、起死回生の復活劇への道筋であった。このようなエピソードを演じるときのチョン・イルは、本当に表情が生き生きとしていた。
端整なルックスで知られるチョン・イルは情熱的であり、同時に、理知的な雰囲気を兼ね備えた演技を見せる。その良さが、『ヘチ 王座への道』でも十分に発揮されていた。このドラマを通して、誠実に自らの役割を全うしようとするヨニングンの姿は、チョン・イルの演技力によって深く印象に残るものとなった。
結局、俳優は自分の秘めた表現力によって演じるキャラクターに命を吹き込むものだが、チョン・イルの情熱によって不当な扱いを受けていたヨニングンの生き方が大いに脚光を浴びていた。
文=康 熙奉(カン・ヒボン)
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